後退局面に入った国内景気

11月12日に内閣府から2012年7-9月期のGDP(国内総生産)が公表された。実質GDP成長率は前期比で-0.9%(年率換算では-3.5%)となり、3四半期ぶりにマイナス成長となった。また、生活実感に近いといわれる名目GDPは同-0.9%(同-3.6%)で2四半期連続のマイナス成長であった。
実質GDPの内訳をみると、輸出が大きく減少し、とりわけ自動車や集積回路などの減少が響いていた。また、内需では、自動車やテレビ、パソコン、レクリエーションなどへの支出減少が響いたとみられる個人消費と、自動車やパソコンなどへの支出が減少したとみられる企業設備投資がマイナスとなった。自動車が輸出、消費、設備投資のいずれにも関わっているのが特徴であった。


他方、貿易統計によると、2011年度の日本の総輸出額は65兆2,814億円であり、そのうち自動車が8兆5,479億円で、全体の13.1%を占めていた。また、2012年4-10月の累計ではさらにその割合は上昇し、全体の14.2%を占める。したがって、自動車輸出の減少は、日本の輸出額全体に大きな影響を与える構造となっている。


また、2012年10月の貿易収支は7月以降4カ月連続で赤字が続いていた。では、この貿易赤字はいつ頃まで続くと見込まれているのだろうか。日本経済研究センターが日本の主要エコノミスト約40人を対象に実施しているESPフォーキャスト調査(2012年11月8日発表)によると、黒字に転換する時期として2012年度中は0人、2013年度中は10人、2014年4-6月以降が18人であった。一方、今後数年内に黒字転換しないという予測は11人となっていた。多くのエコノミストが貿易収支の早期黒字化は難しいとみているようである。


このように、日本経済は内需に上向く傾向がみられないなかで輸出に頼らざるを得ない状況が続くと考えられるが、外需に対する厳しい見方は依然として消えていないのが現状である。実際、帝国データバンクのTDB景気動向調査(2012年11月実施)においても、全体の景気DIは4カ月連続で悪化しており、悪化業種も幅広い。特に、輸出割合の高い『製造』の景気DIは悪化が長引いており、いまだ震災前の水準を大きく下回ったままである。これらの要因などにより、2012年11月の国内景気は後退局面に入ったと判断している。


2013年以降の景気は、12月16日に実施される総選挙の結果により、次の政府がどのような経済政策を打ち出すのかによっても変わってくるであろう。そのためにも、TDB景気動向調査に寄せられる企業の意見が政策に反映されるように努めていきたい。

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