過疎地域でのサテライトオフィス

2013年02月05日

東京一極集中の企業機能を分散させる動きがみられる。東日本大震災後、危機管理の一環として、首都圏の企業が本社機能の一部を地方へ移転させたり、近年、インターネット環境が整備されたことなどを背景に、在宅勤務やサテライトオフィスなどメインオフィス以外で働く人も増えつつある。


地方自治体でも企業の「サテライトオフィス」の誘致を進めており、積極的に取り組んでいる徳島県では、オフィス開設のための施設改修やランニングコスト等への助成金に加え、市町村、地元NPO、企業とともに「とくしまサテライトオフィス・プロモーションチーム」を運営し、課題解決に取り組んでいる。それらが功を奏し、東京のIT関連企業などが次々とオフィスを開設させている。


徳島県は全国屈指のブロードバンド環境が強みだ。2011年7月の地上デジタル化により大阪からのアナログ放送電波が受信できなくなり、テレビの視聴可能なチャンネル数が激減することとなった。その解消のため、県内全域に光通信網を敷設、県内のほぼどの地域でも光回線によるインターネット通信が可能となった。テレビを見るため敷設された光通信網が、インターネット環境を飛躍的に向上させ、地域の強みとなった。


徳島県にサテライトオフィスを開設した東京のあるITベンチャー企業では、事業拡大のために人材募集を続けていたが、無名のベンチャー企業には人が集まらず、採用が進まなかった。ところが、徳島県の過疎地域にサテライトオフィスを作り、IT業務と農業や釣りなど自然との触れ合いを両立できる仕組みを作ると、その働き方がマスコミなどにも注目され、人材が集まってきたそうだ。


価値観やライフスタイルが多様化する現代において、働く場所の選択肢としてサテライトオフィスの果たす役割は大きい。米シリコンバレーのエンジニアは場所に縛られないフレキシブルな働き方をしている。それが自由な発想やイノベーションにつながっている。都会で働くこともいいが、みんながみんな同じ働き方をする必要はないだろう。たとえば、高齢者の多い過疎地域で働くことは、今後訪れる一段と進んだ高齢社会に触れることになり、ビジネスチャンスのヒントが見つかるかもしれないし、自然と触れ合うことで都会では見えないものがみえてくるかもしれない。枠組みに縛られない働き方をすることで、日本再生のきっかけとなることを期待したい。

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