カジノ解禁にはしっかりと議論を行うべき

これまでに何度も構想が浮かんでは消えていた「カジノ」について、解禁法案が年内に国会に提出され、成立する可能性があるという。現状は、青少年への悪影響やギャンブル依存に陥る可能性、治安悪化、犯罪組織の関わりなどを理由とした反対論がある一方で、新しいアミューズメント施設として関連産業や税収への効果を期待する意見もあり、賛否両論といったところであろう。


海外では多くの国でカジノ施設があるが、その性格は多種多様である。例えば、アメリカでのカジノの扱いは州によって異なっている。有名なネバダ州ラスベガスでは、かつては治安も悪化していたが、現在は犯罪に関わりのある人物やマネーロンダリングに対する厳しい取締りを行うことで犯罪組織の影響を払拭し、ファミリー層や地元客をターゲットとしたショーやリゾート施設を核としたエンターテイメントビジネスが中心となっている。
また、ヨーロッパでは格式の高いカジノが多く、ネクタイ着用などのドレスコードを定め、18歳以上限定の会員制を採用し、会員になるための厳しい規制を定めていることが多い。ドイツのバーデン・バーデンやモナコのモンテカルロ、フランスのカンヌやニースなどが典型例だろう。
アジアでも多くの国でカジノが存在しており、最大はポルトガルから中国に返還されたマカオである。マカオはギャンブル的要素の高い施設が多く、2006年にはラスベガスを抜き、カジノ収益で世界一となった。その他、マレーシア、フィリピン、ネパール、韓国は比較的早い段階からカジノを認めており、最近ではシンガポールが2005年に合法化し、2010年にセントーサ島に複合レジャー施設としてオープンした。


日本では、刑法により賭博行為が禁止されているため、カジノの設置は認められていない。しかし、カジノで行われる遊技自体は禁止されておらず、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(風営法)に定義される営業として、景品や金銭と交換できないカジノ的な雰囲気を楽しむ形のカジノバーやメダルゲーム場などで営業が行われている。また、ある企業では、国際旅客船でのカジノ営業を公海上において開始している。


現在、法改正が必要となるため実現には至っていないものの、11の都道府県が税収増や経済効果を狙いとして、カジノの許可権限を有する構造改革特区を目指して、誘致を進めている。とはいえ、現状ではまだカジノに関して議論が尽くされているとは言い難いのではないだろうか。他の遊技施設(例えばパチンコ・パチスロなど)との関係や治安悪化を防ぐための警察との連携など、カジノ解禁には整えるべき課題が多い。カジノによる効果は、建設・不動産、IT関連、ゲーム・アミューズメント、観光関連、ライブ・エンターテイメント、金融、セキュリティなど、さまざまな業界に波及する。国会の場でしっかり議論していただきたい。

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