ビジネスを行いやすい国にするために
10月29日、世界銀行が「ビジネス環境の現状2014」(Doing Business 2014)を公表した。これは世界189カ国・地域のビジネス環境に対する報告書だが、そのなかで各国・地域において企業がどの程度ビジネスを行いやすい環境にあるかをランキングしている。トップ5の顔ぶれは1位・シンガポール、2位・香港、3位・ニュージーランド、4位・米国、5位・デンマークとなっており、日本は27位にランクされている。
日本は2007年に11位となって以降、7年連続で順位を落とし続けている。日本企業が海外に出て行く産業空洞化がいわれて久しいが、日本よりビジネスを行いやすい環境の国・地域が26あることを考えると、海外需要の取り込みという要因のみならず、ビジネスのやりにくい日本からやりやすい国へ移るという企業の判断は合理的ともいえよう。
ビジネス環境ランキングは大きく10項目から構成されており、その内訳も公開されている。日本は、「事業設立」120位、「建設許可取得」91位、「電力事情」26位、「不動産登記」66位、「資金調達」28位、「投資家保護」16位、「納税」140位、「貿易」23位、「契約執行」36位、「破たん処理」1位である。
これをみると日本のビジネス環境の特徴は明らかであろう。起業しにくく、納税は複雑で時間がかかり、許可取得に向けたプロセスが不十分な一方で、事業の破たん処理に関する制度や仕組みは世界で最も進んだ環境にある、ということである。破たん処理に関しては、事業の閉鎖時に、日本の債権者およびその他権利者は通常1ドル当たり90セント以上回収することができ、また担保権実行手続きや破産処理は1年以内に解決でき、訴訟にかかる費用も破産財団のわずか4%ということである。
ちなみに、他のアジア各国・地域では1位のシンガポール、2位の香港はもとより、6位・マレーシア、7位・韓国、16位・台湾、18位・タイ、23位・アラブ首長国連邦、26位・サウジアラビアが日本より上位に位置しており、日本でのビジネスはアジア内でみてもやりにくい環境にあるということを示している。とりわけマレーシアは法人登記や建設許可申請などに関する手続きの緩和にともない、前年の12位から6位に躍進した。他方、中国は96位、インドは134位となっており、改めてビジネスが難しい国だということがわかる。
政府は日本再興戦略(成長戦略)で、2020年までにこのビジネス環境ランキングをOECD加盟国中3位以内(現在15位)に入ることを目指し、大胆な事業環境整備を進めるとしている。また、中小企業・小規模事業者の起業・創業を大幅に増加させ、開業率が廃業率を上回る状態にして、緊急構造改革期間である2017年度までに開業率・廃業率が米国・英国レベル(10%台)になることを目指すという(日本は2004年~2009年平均4.5%)。規制と制度面でのビジネス活動の容易度は規制分野によって大きな乖離があるものの、規制改革を行った国はその後の経済成長が高まってきたことも事実である。企業が日本でビジネスを行いやすい環境を作ることは、日本経済を強固なものにするために不可欠である。