グローバル化をどう捉えればよいのか

先日、経済協力開発機構(OECD)と世界貿易機関(WTO)が付加価値の流れを追う貿易統計を公表した。従来の貿易統計では、直接貿易を行う相手との取引金額で計上していた。しかし、国際分業が複雑化し、国境を越えたサプライチェーンが構築された現在では、「中間財」の貿易額が何度も計上され、貿易額が過剰に記録されがちである。


それに対して、OECDとWTOが公表した貿易統計では、最終財の価値を付加価値ベースで輸出国に分割し、そこから輸出された形に組み替える。そのため、従来の二重計上されていた中間財の貿易額を取り除き、より実態に近づける試みとして、この付加価値貿易統計は注目されている。


付加価値でみると、日本の貿易統計は大きな特徴を有している。最新の2009年時点のデータをみると、日本では国内で消費する製品やサービスの付加価値の88%が国内で創出されており、この比率は世界1位。資源が少なく、中間財から完成品の生産までを自ら賄ってきたことから「垂直統合型」と称されてきた日本企業の生産構造が、改めて浮き彫りになっている。


さらに、貿易相手国もこれまでとは異なる。従来の貿易統計では、日本の輸出相手国は中国がトップで、アメリカ、韓国、台湾、タイが続く。しかし、付加価値ベースでみると、トップはアメリカで中国は2位と順位が逆転する。他方、貿易黒字という側面でみると、対中、対韓貿易黒字は総額ベースと比べてほとんど無くなるが、対米貿易黒字は60%増加する。これは、アジアへの中間財輸出がアメリカの最終消費財に行き着くためである。そのため、日本の貿易相手とお得意様は依然として先進国であり米国であるともいえる。
また、サービスは日本の付加価値輸出でみると42%を占めている。さらに、製造業における輸出に占めるサービスの割合も30%と高く、モノの輸出にもサービスを付帯させることが競争力を高める大きな源泉となるといえる。


このような異なる視点で作成された貿易統計をみると、改めてグローバル化とは何かと考えざるを得ない。一般に、経済のグローバル化とは、資本や労働の国境を越えた移動が活発化するとともに、貿易を通じた商品・サービスの取引や、海外への投資が拡大することによって世界における経済的な結びつきが深まることを意味する。経済のグローバル化は、輸送コストの低減や貿易・投資の自由化によって促進されてきた。
また、近年の情報処理やインターネットなどの情報伝達分野における技術革新は、グローバル化を推進する新たな原動力となっている。グローバル化は様々なチャネル(対内・対外直接投資、輸出入、生産委託、海外研究開発活動)を通じて進展する。これまで、グローバル化と国内産業・企業の生産性との間に正の関係が存在することは多くの実証研究によって示されており、そのメカニズムとして、<分業効果>、<学習効果>、<スピルオーバー効果>が考えられている。しかし、それぞれがどの程度の効果をもたらしているかは必ずしも定説があるわけではない。
今後、グローバル化を考える際には、日本企業による海外との取引関係とグローバル化の実態を明らかにし、グローバル化による効果の基本的特徴を把握することが日本経済を語る上での大きな課題になるといえよう。

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