2014年上期の新規株式上場、リーマン・ショック後最多に
2014年も6カ月が経過し、日経平均株価(終値)が1万5,000円台で推移するなか、国内の新規株式上場(IPO)企業数が堅調に増加している。
2014年1~6月のIPO企業数をみると、計27社となったが、これは2013年比で7社増、リーマン・ショックのあった2008年以降で最多の件数を記録した。日経平均株価は2月以降、1万4,000円台で下落傾向にあったが、6月は円相場の落ち着きから1万5,000円台を回復。東証での売買代金は3月以降前年を下回るなど、一時の勢いは薄れたとはいえ、近年の株価低迷から脱したことは間違いない。
IPO企業数が増加した要因には、こうした相場環境を追い風に、以前より準備を進めてきた企業がIPOに踏み切るという2013年以降の流れが継続しているほか、各支援機関によるセミナー等をきっかけにIPOを検討する企業が増加してきたことも挙げられよう。
ところで、企業は何のためにIPOを目指すのか。理由として真っ先に浮かぶのは資金調達であろう。しかし、最近のIPO意向企業は、資金調達以外の目的でIPOを目指す傾向もうかがえる。帝国データバンク(以下、TDB)が、2014年3月に全国のIPO意向がある企業(403社)に聞いた調査結果によると、IPOの目的は「知名度や信用度の向上」が7割超を占めてトップ(74.7%)で、次いで「人材の確保」(51.4%)となり、「資金調達力の向上」(47.6%)は3番目だった。さらに4番目には「従業員の士気向上」(37.7%)が挙がるなど、企業は、ブランドや信頼の向上、それにともなう人材面のメリットに多くを期待しているようだ(出典:帝国データバンク「特別企画 新規株式上場意向に関するアンケート調査」-2014年4月-)。
実際に、2013年にIPOを果たした企業や支援側の声を聞くと、「IPOにより新たな取引が開始された」、「顧客からの依頼・相談が増えた」、「従業員の意識が向上した」「人材の質・量という面で採用活動が充実」など、多くが非上場時には得られなかった効果を実感しており、そういった効果が企業のさらなる成長には必要だと認識している経営者は多数いるのではないだろうか。
TDBがIPOの動向と展望を特集したTDB REPORT 127号(2014年4月発刊)の制作時点では、2014年のIPOはこれまでの流れが継続し、「70~80社を予想」という声が専門家の多くから聞かれた。企業側からも、今後5年間の国内IPO市場の展望は6割超が「好転する」、また35.7%が今後5年以内に「IPOの予定がある」との回答があった。こうした企業の前向きな反応からみても、2014年以降もIPO企業数の増加には期待が持てるといえよう。
ただ、「企業にとってIPOはゴールではない。いかに持続的な成長・継続ができるか、そのための手段。だからこそ、IPO後の成長シナリオや明確なビジョンを持ってステークホルダーに発信していく必要がある」という、ある取材先の言葉は非常に示唆に富んでいる。IPOを目的化せず、自社の成長のために、中長期的な経営計画のもと、IPOを選択する、そういった魅力的な企業のIPOがさらに増加することを期待したい。