現実を反映する統計とは
8月13日に公表された、4~6月のGDP(国内総生産)は年率で6.8%減となり、大幅なマイナスとなった。いうまでもなく要因は消費税率引き上げの影響であるが、この結果は民間エコノミスト42人による事前予測とほぼ一致していた(ESPフォーキャスト調査、日本経済研究センター)。株価をみてもGDP発表前後で大きな変動はなく、概ね想定の範囲内だったといえよう。今後、政府は7~9月期のGDP成長率などをもとに消費税率10%への引き上げに対する判断を12月までに行うとしている。上述の民間エコノミストは4%台の成長を予測しているが、安倍首相がどのような判断を行うのか注目される。
GDPは経済統計のなかでも特に重要度の高い統計であるが、さまざまな基本統計をもとに推計する二次統計である。そのため、基本統計の方法や結果が変われば、GDPの数字も変わりうる。
例えば、GDPのうち個人消費を購入者側から推計するときに使用する基本統計は、主に「家計調査」と「家計消費状況調査」、「全国消費実態調査」(いずれも総務省)である。このうち「家計消費状況調査」において、総務省は食料、衣類、書籍のほか、音楽配信や電子書籍などのデジタルコンテンツ、ホテルや航空券予約など22品目について、ネットショッピングによる消費(以下、ネット消費)の動向を把握する対象項目を2015年1月から追加するとしている。これまでネット消費について十分に把握できていなかったこともあり、今後のGDP統計にも影響を与えると考えられる。
ネット消費の市場規模は4~5兆円規模に達する可能性も指摘されているが、これは個人消費全体(295兆円)の約1.7%に相当する。また、ネットショッピングの利用世帯の割合は24.3%に達している。今後もネット消費は拡大が予想され、消費動向の把握に欠かすことはできないであろう。結果として、GDPがより実態を反映した統計に改善することで、政府が行う社会保障や震災復興、景気対策などさまざまな政策の妥当性を高めることにもつながる。統計調査も一歩一歩、変化しているのである。