女性がさらに活躍する時代を迎えるために
政府は、「日本再興戦略」のなかで「2020年に指導的地位に占める女性の割合30%」を掲げている。ここでいう指導的地位とは、役員、管理職などを指す。少子高齢化、人口減少の進行が著しいなか、女性がこれまで以上に活躍をし、女性の力を活かすことは、日本の経済や社会の活性化、安定を実現していくためには必要な条件といえる。
帝国データバンクが2014年8月に発表した「女性登用に対する企業の意識調査(有効回答:1万1,017社)」では、女性の管理職割合が10%に満たない企業は、81.1%にのぼる。また、総務省統計局「労働力調査」によると、管理的職業従事者に占める女性割合は、日本は11.1%である。なお、米国(43.1%)、フランス(39.4%)、ドイツ(30.3%)となっていることから、国際的に見ると日本は低い水準にあることがわかる。
日本の女性労働者の特徴として、女性労働力率(女性人口に占める女性労働者の比率)が、20歳代後半から30歳代にかけて落ち込む"M字カーブ"を長年に渡って描き続けてきたことがあげられる。総務省統計局「労働力調査(長期時系列)」によると、2012年時点の女性労働力率は、25歳~29歳(77.6%)、30歳~34歳(68.6%)、35歳~39歳(67.7%)と下落を続ける一方、40歳~44歳(71.7%)、45歳~49歳(75.7%)は上昇に転じている。これは、女性労働者が、結婚や出産・育児などのライフイベントにともない労働市場から退場した後、再び労働市場に復帰している実態を表している。将来、女性管理職を増やすためには、"M字カーブ"を解消することが必要となる。具体的には、政府や企業が育児休暇制度や保育環境の充実を図り、男性の育児参加を促し、女性が労働市場から退場することなく働き続けることができ、管理職候補となる女性労働者が増えることが重要だ。
同時に、「男女雇用機会の均等」がより進むことを期待したい。
長年にわたって、男性の「終身雇用」「年功序列」を前提とした長期雇用に基づき、男性が金銭的な収入をともなう社会的な職業に就く(女性は家事労働を担う)ものという"男性中心の労働観"が、広く社会や組織、労働者の間に根付いてきたことは、否定しようがないことである。しかし、昨今では、将来的に「終身雇用」「年功序列」が成立し続けることは困難であるということが社会的に認識されつつあり、また、女性の社会進出が進むことで、少しずつではあるが"男性中心の労働観"も解消されつつあるように思われる。
政府は大臣や主要ポストに女性の登用を模索するなど、「2020年に指導的地位に占める女性の割合30%」の実現に動いている。規模の大小を問わず全国の企業の間でも、女性がさらに活躍できる環境を実現するための取り組みが加速することを期待したい。