オリンピックがもたらすもの――建設業界の期待と不安
2020年、東京オリンピック。
2013年9月に招致が決定し、日本中が歓喜にわいたことは記憶に新しい。6年後に自分と同世代のアスリートがホームで活躍している姿を想像すると、オリンピックへの期待は高まるばかりである。
オリンピックに活路を見出しているのはアスリートだけではない。来る2015年、オリンピックによる収益拡大を狙うのは建設業界だ。1964年のオリンピックの際は、「オリンピック特需」によって建設ラッシュとなり、それによって日本の高度経済成長はさらに弾みをつけたという。
2020年東京オリンピックの経済効果として東京オリンピック・パラリンピック招致委員会は、2013年から2020年までの8年間で生産誘発額が約3兆円、付加価値誘発額が1.4兆円、雇用者所得誘発額は約7,500億円、と発表している。
50年前のように、オリンピックは日本に成長をもたらすだろう―――そんな楽観的な意見も聞かれるが、地方中小企業のまなざしは冷静だ。TDB景気動向調査(帝国データバンク)によると、「今はむしろ東北に集中してほしい」「東京への一極集中が加速する」など懸念の声もあがっている。既に不足している技術・技能労働者の不足が一層顕著になり、工事の品質や工期などさまざまな問題が生じる可能性もある。建設業界の人材不足は深刻である。
「週刊東洋経済」(2013年9月7日号)によれば、1998年の長野冬季五輪では、施設整備などで巨額の資金がかかり、2002年度に長野県は約1.6兆円の県債残高を抱えてしまったという。2020年東京オリンピックに向けて建設予定の新国立競技場のデザインとして選ばれたハディド氏の案には、形が不快、費用が巨額などの抗議が殺到している。新国立競技場が東京都に借金をもたらす「粗大ごみ」になってしまえば、長野オリンピックの二の舞である。
とはいえ、かつて日本で行われたオリンピックが日本のインフラ整備や都市環境改善に役立ったことも事実である。過去から学び、オリンピックを日本の成長の足がかりとするか、大いなる無駄遣いにするか。今後の動きを注視していきたい。