日本版カジノとギャンブル依存症

4月28日、自民・維新・次世代の3党は「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案(通称:カジノ法案)」を衆院に再提出した。


旧カジノ法案は、2014年6月衆院内閣委員会で審議入りしていたが、安倍総理肝いりの"集団的自衛権容認"に対する与党内の調整に時間がかかり、集団的自衛権、カジノともに反対している公明党内に配慮した形で、結局、採決を見送り、同法案は継続審議となっていた。その後、臨時国会での成立を目指していたが、衆議院解散に伴い廃案となった経緯がある。


カジノ法案に対し慎重派の大半は「ギャンブル依存症対策に課題がある」と唱える。カジノが開設されたことによってギャンブル依存症患者が増えてはならないという厚生労働省ほか関係各所の意向も強い。


しかし、そもそもカジノが日本国内に数カ所開設されたからといって、ギャンブル依存症患者が爆発的に増えるとは考え難い。日本には、競馬・競輪・競艇・オートレースといった公営ギャンブル場が全国に100カ所程度ある。また、"ギャンブル"ではなく、"風営法下の大衆娯楽"という位置づけのパチンコホールも、全国に1万店舗以上存在している。日本生産性本部の「レジャー白書2014」によると、中央競馬の参加人口は840万人、パチンコの参加人口は970万人だ。それほど多くの人が"すでに"ギャンブルと触れ合っているのである。


その現状からすれば、日本版カジノ開設は日本国民にとって、新しい形式のギャンブルが一つ増えるだけであり、かつ、場所も入場者数も限られることから "ギャンブル参加人口"が著しく増加するとは想定しにくい。つまり、依存症増加をカジノ反対の根拠にするには弱いと言える。


もっとも、海外にある既存カジノをみれば、公営ギャンブルやパチンコとはケタ違いのお金を動かすこともできるため、そう言った視点からギャンブル依存症患者が増えるのではないかという意見はある。ただ、そのケタ違いの金額とは庶民感覚とはかけ離れているため、数年前に話題となった「経営者が会社のカネをカジノで使い巨額損失」というような象徴的なケースは出てくる可能性があるが、ギャンブル依存症患者数の底上げにつながるとは考え難い。


こうした日本のギャンブルの現状を踏まえ、国会での議論が深まることを期待したい。

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