この夏の働き方はいかに
「働き方改革」の一環として、長時間勤務の是正に向けた動きがにわかに高まってきた。今年3月、政府は今夏の国家公務員の始業時間をこれまでより1~2時間早め、原則定時に退庁する計画を発表。4月にはさらに経団連や日商などに対し、傘下企業・団体の朝型勤務やフレックスタイム制導入を促す要請書を提出した。夏の間は朝早くから働き、夕方にはゆったりとプライベートな時間を過ごすスタイルを、新たに「ゆう活(ゆうやけ時間活動推進)」と銘打ち、政府は官民を挙げた夏の生活スタイルの変革を目指している。
今後こうした取り組みによって夜遅くまでの残業が難しくなれば、一人ひとりが業務の内容や優先順位を見直すきっかけとなり、労働生産性の向上も期待される。日本生産性本部がまとめたOECD(経済協力開発機構)加盟34カ国の2013年の労働生産性をみると、日本は34カ国中で第22位、主要先進7カ国のなかでは1994年から20年連続で最下位に低迷している。労働力人口が減少していくなか、企業が成長を持続させるためには、ムダな残業を削減し労働生産性を高めていくことが急務となる。
とはいえ、一口に残業といってもいろいろなパターンがある。残業代目当ての残業だったり、ダラダラとただ遅くまでいるだけだったり、また、周囲に気を使ってなかなか帰ることができなかったりなど、こうした残業には今回のような取り組みが効果的といえる。しかし、現実にはそもそも日々の業務量が多く、定時までに終えたくても終えられないようなケースも少なくない。このような残業は、業務量や人員構成を見直さないかぎり改善は難しく、働き手からは「始業時間変えるだけじゃなく、業務減らすか人増やせ」というような声も出てくるのではないか。
残業を減らして長時間勤務を是正するには、まず働き手同士がよく話し合い、問題意識を共有することが欠かせない。制度だけでなく社会や企業の意識改革も重要であり、そういった意味でも政府による夏の生活スタイル変革の提唱は、一人ひとりの意識や価値観を変える良い機会となり得る。社会や企業が変わるには一定の時間を要するだろう。今回の政府の提唱を受け、"まずは変えてみる"企業が何社現れるか、この夏の動向に注目してみたい。