ネットバンキングで法人口座の被害拡大、不正送金にご注意

インターネットバンキングを使った不正送金の被害が急増している。警察庁が今年2月に発表した「平成26年中のインターネットバンキングに係る不正送金事犯の発生状況について」によると、この2年で発生件数・被害額ともに急激に拡大している。発生件数は平成24年の64件から2年後の平成26年には1,876件へ急増、被害額も平成25年(約14億600万円)から平成26年(約29億1,000億円)のわずか1年で2倍超へ膨れあがっている。平成26年の被害額を膨らませた要因として挙げられるのが、法人名義口座の被害拡大である。個人被害額が平成25年の約13億800万円から平成26年の約18億2200万円と前年比39%増なのに対し、法人は約9800万円から約10億8800万円と11倍にもなっている。


犯人が盗むのはネットバンキングのログインに必要なIDとパスワード。これらを入手してログインし、別口座への送金操作を行う。最近は手口が巧妙になっており、利用者が閲覧した一般のサイトを通じてパソコンをウイルスに感染させ、利用者がその後そのパソコンでネットバンキングを利用しようとIDやパスワードを入力しただけで、犯人に伝わってしまうケースもある。


こうした対策として金融機関が導入を進めているのが、使い捨てのパスワード方式「ワンタイムパスワード」だ。金融機関は数字をデジタル表示するキーホルダーのような小型端末を顧客に配布。顧客はネットバンキングを利用する際に、そこに表示される数字の羅列を第2のパスワードとして入力する。端末に表示されたパスワードで認証に成功すると、ただちにそのパスワードは破棄され、使えなくなるようになっている。ネットバンキングのログインに必要なIDとパスワードに加え、小型端末に表示される使い捨てのパスワードを併せて利用することで、ネットバンキングによる不正送金のリスクを大幅に減らすことができるのだ。


もし不正に送金されてしまった場合は金融機関が被害額を補償してくれるケースが多いというが、補償してもらうには利用者に落ち度がなかったことが前提となる。パソコンのソフトを更新していなかったり、パスワードの管理がずさんだったりすると、そのことを理由に補償されない場合もあるので注意が必要だ。また補償してもらえるとしても、手続きには相応の時間が必要となり、企業活動において日々の資金繰りに大きな影響を及ぼしかねない。不正送金は十分な対策を取ればリスクを軽減できるため、「いつ自分の会社が被害に逢ってもおかしくない」という危機意識を持ち対策を講じておくことが、円滑な企業運営には必要であろう。

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