9万人分のムダ削減に向けて
パソコンやスマートフォンの普及を背景にネット通販が拡大するなか、受取人不在による「再配達」が物流業界で大きな問題となっている。再配達の削減に向けて今年8月に国土交通省が実施したアンケートによると、消費者が1回目の配達で受け取れなかった理由は、「配達が来るのを知らなかった」からという回答が最多の42%を占めた。また、「配達が来るのを知っていたが、用事ができて留守にしていた」「もともと不在の予定だったので再配達してもらう予定だった」といった再配達を前提としているような回答が4割を占め、若年層ほどその割合が高かったという。
1件の配送にどれくらいの負荷がかかっているかなど、消費者は考えることもないというのが現実だろう。いまや通販では一定額以上購入すれば「送料無料」が当たり前となっていて、消費者もそれを享受している。当然のことながら、全国から荷物が翌日届くようなサービスがタダであるわけがない。物流には少なからずコストが発生し、環境にも負荷がかかっているという認識を一人ひとりの消費者が持つだけでも、再配達は軽減していくのではないだろうか。
企業側も再配達問題への取り組みを加速させている。アマゾンジャパンは10月13日から、購入した商品をその日のうちにファミリーマート約7,100店舗で受け取ることができる「当日お急ぎ便サービス」を開始。せっかく商品を注文しても帰宅が夜遅いため、当日受け取れることができなかったような消費者ニーズに対応している。また、セブン&アイグループもネット通販で購入した商品をセブン‐イレブンで受け取れる「オムニセブン」を今月から本格始動しているほか、ファミリーマートも今月24日より、日本郵便が通販会社から受託した荷物を店頭で受け取れるサービスを開始する。コンビニにとっては荷物の受け渡しをきっかけに「ついで買い」も期待でき、新たな物流拠点としてコンビニの存在感がさらに高まっていきそうだ。
国土交通省は先月14日、再配達による社会的損失が1年間でおよそ1.8億時間、ドライバー約9万人分の労働力に相当すると公表した。人手不足が顕在化している物流業界にとっては無視できない大きな数字だ。年末に向かうこれからの季節、普段にも増して宅配サービスの利用は増えてくるだろう。通販市場のさらなる拡大に向け、再配達のムダを削減するための官民を挙げた取り組みが一層求められる。