偽装データの根
2005年の耐震偽装事件から10年、今回はくい打ちデータ偽装が世間を騒がせている。発端となった旭化成建材は、施工データ流用の有無の調査を実施、確認が終了した2,864件のうち1割強にあたる360件で流用が判明したと発表した。
こうした状況を受けて、くい打ち業者が加盟する「コンクリートパイル建設技術協会」は、先行して調査・発表している旭化成建材を除く、加盟する40社の施工管理データの流用件数と点検実施状況を発表した。
報告では、各社で独自に調査する物件総数は1万9,765件に及んでおり、うち調査が完了したのは2,845件と全体の7分の1に過ぎない。現在のところデータ流用が認められたのは22件と調査完了件数の0.7%だが、この報告により業界全体で不正の慣行があったことが伺える。
もっとも点検予定件数が多い、大手のジャパンパイルの調査予定件数は1万件におよび、同社の見通しでは、調査完了までには今後半年を要すると発表している。再調査にかかる時間やコスト、その間の工事遅延など、建設業界全体への影響が危惧される。
今回発覚したくい打ちデータの偽装は、民間分譲マンションから始まったが、民間に限らず病院や公共施設でも発覚しており、影響は広がりをみせている。今回の流用事件で該当企業への信用はもとより、業界全体への不信が高まっている。「どうせわからないだろう」という業界のチェック体制の甘さがもっとも大きな要因であろうが、人手不足や元請から下請への多段階発注という特異な構造を抱える業界であるがゆえに「単価が安い」、「納期までの時間がない」などの理由により流用に至るようになった背景は推察できる。
そういった時間の切迫感や多段階による収益構造など、業界の構造自体の見直しがなければ、過去も起きているわけなので、今後も起こりうるだろう。根は深い。こうしたことからコンクリートパイル業界だけではなく、建設業界全体での改革が求められる。