原油価格は今後どうなる?

2016年1月、原油価格が12年8カ月ぶりに1バレル=26ドル台まで急落した。2014年前半は100ドル台をつけていたことからみると怒涛の勢いで下落しており、まさに"逆オイルショック"と呼ぶにふさわしい動きである。


この背景にあるのは世界的に供給拡大と需要縮小の両方が生じ、原油需給が緩和したことにある。その最大の要因は中国など新興国経済の減速にある。リーマン・ショック後、中国は約4兆元(約57兆円)の景気刺激策を打ち出し、世界経済を支える役割を果たした。しかし、一般に景気対策の賞味期限は概ね3年程度と言われる。中国は改革開放路線の中で社会主義市場経済を目指し高度成長を続けてきたが、2015年のGDP成長率は政府の公式発表でも前年比6.9%で、25年ぶりの低成長となった。


総務省が発表した2015年の消費者物価指数をみると、家計の主要10大費目では光熱・水道と交通・通信だけが低下しており、その大きな要因が灯油(前年比-22.6%)とガソリン(同-15.9%)の価格下落であった。賃金の上昇がなかなか進まないなか、原油価格の下落は家計負担を軽減する一因として作用した。原油価格の下落は、資源輸入国である日本にとってはプラス材料になるといえよう。


他方、マイナス材料もある。ガソリンスタンド業界では原油価格の下落以上に小売価格を引き下げることもあり、価格競争が一段と激しくなると予想される。また、原油価格が下がればエネルギー関連企業の業績に対する懸念が高まり、株式や社債の価格を下落させる原因ともなる。特に、米国では大手エネルギー関連企業も多く、米国株式市場への影響も大きいため、日本の株式市場に波及するリスクも考えなければならない。


では、原油価格はどこまで下がるのだろうか。国際通貨基金(IMF)が1月26日に公表した「Primary Commodity Prices:Price Forecast」によると、原油取引の主要3市場(英ブレント、ドバイ、WTI)の平均価格で、2016年1-3月期に1バレル当たり27.0ドルまで下落したのち、4-6月期以降徐々に上昇、2017年10-12月期で37.4ドルになると予測している。緩やかに上昇するとの見通しだが、2015年10-12月期の42.2ドルまでは届かないという見方である。


原油価格は、今後も低水準での推移が続きそうだ。

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