正社員改革の行方
3月1日、日本経済団体連合会(経団連)に加盟する企業の会社説明会などの採用活動が解禁され、2017年春卒業の学生の就職活動が本格的にスタートした。経団連は17年卒採用の解禁時期を昨年の8月から6月に2カ月前倒ししたが、経団連に加盟していない企業からは優秀な学生をいち早く獲得しようとすでに内定を出したところもあるという。
しかしながら、ここにきて再び正社員の働き方についての議論が活発化してきた。雇用を含めた社会制度の違いを表したキーワードとして、日本の「メンバーシップ型」と欧米の「ジョブ型」があるが、正社員改革の第一歩として、日本においてもジョブ型正社員に関する雇用ルールの整備を行うべきというものである。
ジョブ型正社員とメンバーシップ型正社員の特徴を比べると次のようになる。
ジョブ型では、スキルのない若者に厳しく、スキルのあるシニア従業員(年齢ではなく仕事に紐づいた報酬に比べて熟練度が優っている従業員)にやさしい仕組みといえる。原則として仕事に人がはりつく形で、報酬制度は職務給が基本となり、年齢や家庭の事情は関係ない。また、採用は欠員補充が基本となり、社内に欠員を補充できる人材がいない場合に社外から採用される。
他方、メンバーシップ型は、過去にそれほどトレーニングをしていなくてもジョブ型に比べると就職しやすいため若者に優しい半面、いったんメンバーシップを得る機会から外れてしまった若者(非正規社員やフリーターなど)に厳しい仕組みといえる。原則として人に仕事をはりつける形で、報酬は職能給が重視される。採用は新卒を定期採用し、育成はOJTとジョブローテーションによる企業内育成が基本となる。
これは、2013年に規制改革会議の答申で「「ジョブ型正社員」を増やすことが、正社員一人一人のワークライフバランスや能力を高め、多様な視点を持った労働者が貢献する経営(ダイバーシティ・マネジメント)を促進することとなり、労使双方にとって有益」としたことが発端となり、その後の成長戦略などに反映されてきた。
日本の労働市場が正規・非正規といった線引きで極端に二分化するなか、正社員という身分を得るために企業からメンバーシップ型の無限定な働き方を期待・要請されることは、とりわけ既婚の女性にとって不利に働きかねない。そこで、ジョブ型を含む、より多様な正社員モデルの普及・促進が必要との議論が高まってきたのである。
今後は「ジョブ型」をより意識した採用・就職活動の広がりを前提とした正社員改革が進んでいくと考えるべきであろう。