約7割の企業で「後継ぎ」がいないという衝撃
ソフトバンクグループ代表取締役社長の孫 正義氏が社長続投を表明し、後継候補の副社長ニケシュ・アローラ氏が顧問に就任するというニュースを聞くに及び、事業承継が一筋縄でいかないものだとあらためて感じた方も多いことだろう。
帝国データバンクが2016年2月に発表した 「2016 年 後継者問題に関する企業の実態調査(2016年2月発表)」では2014 年以降(2014 年1 月~2016年1 月)の詳細な実態が判明している28 万9,937 社(全国・全業種)を対象に、後継者の有無を集計したところ、9 万8,224 社(構成比33.9%)が「後継者あり」となっている一方で、66.1%にあたる19 万1,713 社が「後継者不在」となっている。
社長の年齢別では、「80 歳以上」の企業では、34.7%が後継者不在となっている。また、60 歳以上では「70歳代」と「80 歳以上」で、前回および前々回の不在率を上回っている。「60 歳代」でも、半数強の54.3%が後継者不在であり、60 歳以上の高齢社長企業(13 万1,257 社)では、ほぼ半数の6 万5,617 社(構成比50.0%)が後継者不在となっている。また、帝国データバンクの「第8回 全国「休廃業・解散」動向調査(2015年)(2016年1月発表)」では、2015年(1~12月)の「休廃業・解散」は、2万3,914件判明している。開店休業状態の企業であれば、影響は限定的であるが、地に足をつけた事業により顧客とのつながりのある企業が後継者不在を理由に廃業してしまうのは、日本経済にとって大きなマイナスであるといえよう。
経営の最前線で日々活躍されている社長は営業や資金繰りなどに追われ、将来についてゆっくりと考えている余裕がないものと思われるが、経営のバトンをいつ誰に渡すのかについて一度計画を立ててみてはいかがだろうか。事業承継を用意周到に進めていくことは、将来発生するおそれのある経営上のリスク回避にもつながる。まずは、今後の会社のあり方について想いを巡らし、将来的に経営を委ねることが出来る有望な人材が親族内もしくは社内にいるかどうか公平な視点で見渡してみる必要があるだろう。一般的な中小企業では大企業のように高額報酬で後継者を招聘することは難しいだろうが、リーダーシップや人間力を備えた人物がきっといるはずだ。その人物が後継経営者候補として適任であるかどうかを見極め、次世代を担う人材として育成していくことは現役社長の責務といえる。