GDP統計大改定
2016年12月8日に公表予定の2016年7-9月期GDP(2次速報値)から、日本のGDP統計が大きく変わる。国民経済計算(GDP)は国際連合で加盟国合意のもと採択された国際基準(SNA)を基に算出されるが、今回の改定で最新の基準に対応することになる。
GDPは、統計法で基幹統計に位置づけられ、その第6条において、国際連合の定める国民経済計算の体系に関する基準に準拠しなければならないと規定されている。SNAは経済・金融環境の変化に対応する形で不定期に更新・改定が行われる。その最新のものとして、2009年2月に国連において「2008SNA」が採択されており、米国や欧州、韓国など多くの先進国では数年で2008SNAへの変更が行われてきた。
日本では、2011年の「公的統計の整備に関する基本的な計画(第I期)」での議論を皮切りに、2012年4月に内閣府にて検討開始、2013年3月に具体的な方針の検討がなされ、2014年3月に「公的統計の整備に関する基本的な計画(第II期)」(閣議決定)において2016年度中に2008SNAに対応する方針が決定された。ようやくGDP統計への対応が図られるという状況である。
今回の大改定では、各種の概念・定義の変更や推計手法の見直し等が行われるが、最も大きな影響を受けるのは、企業内における研究・開発(R&D)の取り扱いに対する変更である。
従来、R&Dについては、大学や国立研究開発法人などの活動は政府消費としてGDPに計測されていたが、民間の研究機関のR&Dは中間消費として扱い、企業内のR&Dは産出額を記録していなかった。2008SNAでは、「R&Dは、知識ストックを増加させ、それを活用して新たな応用を生むような創造的活動」として位置づけられ、主に企業の設備投資に分類されることとなる。
その他、住宅関連の仲介手数料などを含む所有権移転費用や、住宅ローン保証などの定型保証、企業年金の年金受給権の記録、輸出入における特許等サービスの扱い変更など、さまざまな精緻化が図られる。内閣府経済社会総合研究所によると、2008SNAなどへの対応で、GDPが従来の基準と比較して約19.8兆円(4.2%)増加するという。
本来は、国際基準に合わせた統計を作成することが第一義であるが、日本銀行が個人論文として公表した税務統計を利用したGDPの試算など、より正確な経済実態を捉える試みは今後も続けられなければならない。