共働き女性増加の要因とは

「国民経済計算」(内閣府)によると、日本の雇用者所得は3年連続で増加している。この雇用者所得増加のけん引役は、雇用者数の増加、とりわけ女性雇用者の増加と言える。


2016年の雇用者数は前年比89万人増加したが、そのうち女性が57万人を占めていた(「労働力調査」(総務省))。安倍政権発足後の2013年と比較すると、雇用者は176万人増加し、女性は125万人増と7割超を占める。さらに、正規の職員・従業員では、2013年比62万人増のうち、女性は50万人にのぼる。


女性のなかでも、近年は共働き女性の増加が際立っており、共働き世帯比率は、2013年頃からトレンドより上振れる形で上昇してきた。年齢別では、いずれの年齢層でも共働き女性は増加しているが、特に25~34歳と35~44歳、45~54歳の増加が顕著となっている。


こうした共働き女性の増加には、さまざまな要因が複合的に作用しているとみられるが、主に(1)政府や企業が成長戦略の一環として進めてきた女性の労働参加促進策が奏功し、女性の労働参加が増加している、(2)消費増税や年金支給額の減額、社会保障負担の増加などを背景に、老後不安を強めた女性が、新たに労働市場に参入している、などが考えられる。


(1)に対する具体的な取り組みとして、政府は「育児・介護休業法」を改正し、育児や介護を行う労働者が働き続けられる環境を整備してきたほか、「子ども・子育て支援法」の改正で事業所内保育所の整備を支援している。これらを背景に、女性が結婚後あるいは出産後に就業を継続する割合は、自身のライフスタイルに合わせた短時間労働者の増加をともないながら、近年、上昇している。


また、女性活躍推進の取り組みの一環として、2017年度税制改正では、配偶者控除にかかる年収要件が103万円から150万円へと引き上げられる見込みになっている。これを機に、企業が独自に支給している配偶者手当についても、年収制限の見直しが実施されれば、いわゆる「103万円の壁」を理由に就労調整を行っていたパート配偶者の労働時間はある程度増加することが期待される。


日本銀行の実証研究によると、40~50歳代において共働きとなる確率を高める理由について、(2)の老後不安の高まりが共働きの増加につながっている可能性を指摘している。


これらの研究結果からみると、近年の共働き女性増加の背景は、将来不安への対応だけでなく、労働需給がひっ迫するなかで、政府や企業による女性の労働参加促進に向けた施策の影響も反映していると言えるのではないだろうか。

このコンテンツの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します。著作権法の範囲内でご利用いただき、私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます。