受験世界に2020年問題がやってくる
2月は大学入試のピークを迎える。遠隔地に住む姪も今年受験生だが、1月の「大学入試センター試験」の結果が芳しくなく、受験校選定にあたって保護者を交えた懇談会では本人の意志と親の意向が一致せず少々揉めたと聞いた。かつて共通一次試験を経験した身としては、当時の受験校選定をめぐる親とのやりとりを思い出し、なんとも切ない気持ちになった。
かつての「大学共通第一次学力試験」が「大学入試センター試験」に改称されたのは1990年(平成2年)。現在は大学入試の選択肢のひとつとして取り入れる私立大学も多い。学習指導要領の改定にともない試験内容の一部改定など、学習内容や教育環境の変化に沿った変更は行われてきたが、5教科を基本にマークシート方式という根本の部分は変わっていなかった。
だが、大学受験の世界でも「2020年問題」が近づいてきている。文部科学省は現在のセンター試験を2020年の実施を最後に廃止し、新しいテストを導入することを決定している。背景には大学入試の制度の変更だけではなく、高校教育、大学教育、それをつなぐ大学入学者選抜の一体的な改革がある。
「高大接続システム改革会議」が2016年3月に公表した最終報告では、「学力三要素を多面的・総合的に評価するものに転換する」とされ、「大学入学希望者学力評価テスト」が導入される予定だ。この学力三要素とは、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性をもって多様な人々と協働して学ぶ態度(主体性、多様性、協働性)」とされている。マークシートを埋めるだけの試験ではなくなる可能性があり、大きな転換点を迎えることとなる。
文部科学省の調査では、4年制大学への進学率は、共通一次試験が開始された1979年(昭和54年)は26.1%(男:39.3%、女:12.2%)であったが、2013年(平成25年)には同49.9%(男:54.0%、女:45.6%)にまで上昇している。この間、インターネットや携帯電話・スマートフォンの普及にともない社会も大きく変化してきた。
前出の学力三要素は、学生だけではなく、まさに社会人としても求められる要素と共通だ。自分に備わっているかを自問したときに「うっ」となるオトナは少なくないはずだが、これからの子供たちは、この要素を意識した学習環境で学び、大学入試を経験していくことになる。親はそのことを踏まえて、子どもの意欲を引き出し才能ややりたいことを伸ばせる環境づくりへの取り組みが不可避となりそうだ。