急増する個人向けカードローン

2017年3月16日、全国銀行協会(以下、全銀協)は、銀行の個人向けカードローンによる過剰融資の抑制に向けた申し合わせを行った。2016年末の国内銀行の個人向けカードローン残高は前年比9.9%増の5兆4,377億円と大幅に増加した。同残高は、日本銀行による"異次元"の金融緩和政策が始まった2013年以降、10%前後の増加が続いており、5年前の1.70倍にまで膨らんだ。


この間、個人向け住宅ローン残高も増加を続けたが、5年前の1.17倍にとどまる。日銀の金融緩和で住宅ローンなどの貸出金利が低下するなか、高い利ざやが期待できるカードローン向けの貸出が急増した様子がうかがえる。


また、2016年9月には、日本弁護士会連合会が金融庁に向けて「銀行等による過剰貸付の防止を求める意見書」を提出するなど、問題意識は広がりを見せている。


かつて消費者金融を中心に起こった多重債務問題に対しては、改正貸金業法において個人の借入残高が年収の3分の1を超える貸付を原則禁止する規制などが導入された。


一方、銀行による消費者向け貸付は、改正貸金業法の適用対象外となっている。そこで、顧客保護やリスク管理などの観点から、銀行についても改正貸金業法の対象となる貸金業者と同様の体制整備が求められた。そのため、全銀協は会員銀行に対して、金融仲介機能を担う銀行の社会的使命を改めて認識し、引き続き健全な消費者金融市場の形成に資するよう努めていくことを目的に、申し合わせを行うことに至ったのである。


今回の申し合わせでは、銀行は、1)入口となる貸付審査の強化、2)年収に対する借入の状況と信用保証会社による代弁率の分析等を通じた顧客管理の徹底、3)顧客の定期的な信用状況の管理、4)配慮に欠けた広告・宣伝の抑制、などがポイントとなる。


経済の成長に健全な金融機能は欠かせない。一方で、銀行のカードローン貸付の増加は、"異次元"金融緩和の副作用ともいえる。今後は、今回の申し合わせによる業界としての取り組みを通じた成果が求められよう。

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