「物価の優等生」のいま
「物価の優等生」と言われた鶏卵価格はいま、変化の時を迎えている。JA全農たまごの鶏卵価格(Mサイズ基準値、東京)は、2016年に前年比10%以上下落したが、今年の3月以降は3カ月連続で前年同月比上昇となっている。
農林水産省によると、2016年11月から高病原性鳥インフルエンザが発生した6道県で、約130万羽の採卵鶏を殺処分した。その影響で供給量が例年より絞られていることに加え、4月16日の「イースター」(復活祭)に向けて鶏卵大手を中心にたまごの殻に絵柄を描いて楽しむイースターエッグ需要が高まるなかで不足感が出ているという。
近年の鶏卵価格は、栄養や味を高めた「ブランド卵」の生産に力を入れていたほか、アベノミクスによる円安で飼料代が高騰するなどして、2012年の179円/kgから2015年の228円/kgまで、3年連続で上昇していた。
こうしたなかで鶏卵供給は増加していったものの、2016年になると供給量の増加を背景として上記のような価格下落を招いていた。
このような動きは、TDB景気動向調査の結果にも表れている。養鶏業における景気DIは、2014年平均51.4→2015年平均56.2→2016年平均49.3と推移、2016年に大きく悪化した。しかし、2017年平均(1月~4月)は55.4へと上昇しており、特に2016年の半ばを底にして景況感は急速に上向いている。企業からも「鶏卵相場が堅調に推移している」(養鶏、富山県)といった声が聞かれるようになり、鶏卵の市場価格が企業の景況感を改善する大きな要因となったことがうかがえる。
しかしながら、鶏卵価格動向を地域別に細かくみていくと、様相の異なる実態が浮かび上がる。県庁所在地および人口15万以上の市を対象とした小売物価統計調査(総務省。白色卵、Lサイズ、パック詰10個入り)によると、2017年1月~3月平均の鶏卵価格は最も高い山形市(259円)と最も低い佐賀市(190円)では69円の差がみられている。また、価格変動では、上昇が33市だった一方、下降したのは46市にのぼり、全国的にはまだら模様といえよう。
鶏卵価格が大きく変動する背景には、養鶏業の構造問題がある。卵はほぼ国産であるが、飼料まで考慮すると自給率は13%にとどまるという。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の行方に不透明感が増すなか、「物価の優等生」と言われた鶏卵業界の今後が注目されよう。