若者はクルマを買えない?買わない?

「若者のタバコ離れ」「若者のビール離れ」など、何かにつけて「若者の○○離れ」と言われる。最も、年長者による「これだから最近の若者は云々」という愚痴話は、歴史を遡れば彼の「徒然草」を執筆した吉田兼好法師も「最近の若者の言葉遣いは全くもってけしからん」と呟くくらいであるから、いつの時代もそうした「話のネタ」は変わらないものなのだろう。しかし、近年に限って言えば、特に日本の一大産業である自動車メーカーにとって、そして日本の経済関係者にとっての関心事は、「若者のクルマ離れ」であろう。


近年の新車の売れ行きを見ても、若者における「クルマ離れ」は深刻だ。内閣府によれば、最新の29歳以下の若年層世帯の乗用車普及率は約47.9%。60歳以上の団塊世代と比較すると、16.1ポイントの開きがある。新車購入に限れば約24.9%に留まり、60歳以上とは27.2ポイントの差に拡大する。新車購入においても、20代の占める割合は極端に少ない。「最近の若者はカネを使わない」という嘆きが聞こえそうなほど、「若者のクルマ離れ」が起きていると言える。


だが、若者の収入動向を見ると、少し様相が変わってくる。ニッセイ基礎研究所によれば、2014年における若年層の可処分所得をバブル期の1989年と比較すると、約12.2%増加している。しかし、消費支出をみると若年単身者世帯の消費支出は可処分所得の増加ほどは増えていない。今の若者はバブル期と比べ決して「お金がない」訳ではないが、「お金を使わない」傾向が表れていると言えよう。ただ、バブル期を実体験していない若者にしてみれば、維持に少なくない固定費が発生するクルマを購入するより、貯金を選択する気持ちは分からなくもない。


こうした傾向はアンケート調査からも読み取ることができる。ソニー損害保険が公表した「2017年 新成人のカーライフ意識調査」では、「車に興味がある」と回答した割合は約48.9%。一方、「車を所有する経済的な余裕がない」と回答した割合も約7割に上る。つまり、「若者がクルマを買えない」状況にある、という観点から見ることも大事となる。したがって、「若者のクルマ離れ」を食い止めるためには、企業の賃上げや助成金など、"経済的余力を作る"ことが、一つの解決手段となるかもしれない。

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