再び膨らむ、インバウンド消費
通勤の乗り換えで利用する、東京メトロ上野駅。夕方の帰宅時には、さまざまな国の観光客を見かける。改札の隣にたたずむパンダに扮したヒト型ロボットと記念撮影する姿を目にするにつけて、外国人観光客は相変わらず多い、というよりもどんどん増えているなという印象を抱く。
2015年「ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞に選ばれた「爆買い」。来日した中国人観光客が炊飯器などの家電製品を大量に購入する映像が、社会現象としてメディアなどで取り上げられ、訪日中国人による「爆買い」が話題となった。その後、中国政府による関税引き上げや円高、モノ消費からコト消費への移行などが重なったことで減速したが、今再び好調なのだ。
観光庁「訪日外国人の消費動向 平成29年4-6月期 報告書」によると、1人当たりの旅行にともなう支出金額は、2015年7-9月期の18万7,000円をピークに、直近の2017年4-6期には14万9,000円へと減少している。しかし、外国人観光客の数が順調に増え続けたことから、総額である旅行消費額(旅行支出×訪日外客数)はピークであった2015年7月-9月期の1兆9億円を超えて、直近の2017年4-6月は1兆776億円と過去最高になった。また、日本百貨店協会によると、2017年7月のインバウンド売上高は227億円(前年同期比54.9%増)、客数35.7万人(同32.2%増)と、ともに単月で過去最高を更新している。ビザの発給要件緩和のほか、格安航空会社(LCC)路線やクルーズ船の寄港数増加が追い風となり、好調なインバウンド消費が統計数値に表れている。
外国人観光客の購入品が、家電や腕時計といった高額品から化粧品などの消耗品へ移るなか、前出の「訪日外国人の消費動向 平成29年4-6月期 報告書」によると、観光などで日本を訪れた中国人の83.6%が化粧品を購入し、1人当たりの平均支出額は5万8,110円となっている。観光で来日した中国人の実に8割が、日本国内で購入した化粧品を土産物などとして自国へ持ち帰っているのだ。さらに帰国後も自国で購入を続ける動きがあり、アジア向けを中心に日本からの化粧品の輸出額が急増、日本の大手化粧品メーカーは増産に向けた投資を行っている。
外国人観光客数の増加の流れは今後も続くことが見込まれる。2020年には東京五輪の開催で、さらに多くの人たちが世界中から我が国へ集まるだろう。そこで商品購入やサービスの消費を通して満足してもらうことができたなら、帰国後のさらなる購入や消費へとつながることが見込まれる。中国のEC市場は既にアメリカの2倍超、日本の10倍超とも言われ、世界最大となっている。メード・イン・ジャパンのファンが中国などで増え、日本製品の輸出が活発となれば、ポスト2020年を乗り越えていく力の一助となっていくことだろう。ぜひ期待をしたい。