受動喫煙対策、秋の陣

ちょうど1年前のこの時期、当欄で「オリンピックと屋内全面禁煙」というコラムを書いた。2016年夏のリオ五輪の閉会式には安倍首相や小池東京都知事が登場し、「次は東京で会いましょう!」とおおいに湧いた。国際オリンピック委員会(IOC)は「スモークフリー・オリンピック」を掲げており、東京五輪に向けた準備が加速するなかで屋内全面禁煙、受動喫煙対策も早期に具体化し実現するのだろう...と思っていた。当時は。


ところが、その読みは大きく外れた。1年後の現時点で、状況は膠着状態となっている。受動喫煙対策に取り組む厚生労働省は、2016年10月のたたき台では飲食店をすべて原則禁煙とする方針だったが(喫煙専用室は別途設置可)、飲食業界などから「小規模店にとっては喫煙室設置のコスト負担が大きい」との反論を受け、2017年3月にバーやスナックなど酒類を提供する小規模店舗は規制の対象外とする改正案を公表した。


ところが、厳しい規制強化を求める塩崎厚生労働大臣(当時)に対し、「分煙」「喫煙」表示を義務化することで喫煙を認める方針の自民党が対立。折り合う見通しが立たず、最終的には今年6月に閉会した第193回通常国会での健康増進法改正案の成立は見送られた。


この間の規制推進派、反対派の議論をみると、それぞれの立場での意見はなるほどという部分はある。2016年以降の電子タバコのヒットで喫煙=紫煙をくゆらす、というイメージも変わりつつある。だが、やはりたばこを取り巻く環境や健康に敏感な世論からすると、規制反対派の分が悪くなりつつあるのではなかろうか。


厚生労働省が2017年6月に公表した「国民生活基礎調査」では、2016年の成人喫煙者の割合は19.8%(男性:31.1%、女性:9.5%)と2割を切った。日本たばこ産業(JT)が同年7月に公表した「全国たばこ喫煙者率調査」においても、成人喫煙者の比率は18.2%(男性:28.2%、女性:9.0%)と、やはり2割を下回っている。


受動喫煙による肺がんリスクなど健康被害についても広く知られるようになっており、日本医師会は、受動喫煙の防止対策を強化・実現するための署名活動を2017年5月から開始。約264万筆の署名を集め、この8月に厚生労働大臣宛に提出した。


8月の内閣改造で規制推進派の塩崎氏に代わって新たに厚生労働大臣に就任したのは、加藤勝信氏。論点は、業種か、店舗面積か、はたまた恒久法または時限法か。秋の臨時国会に提出されるであろう健康増進法改正案をめぐりどのような攻防が繰り広げられるのか。「受動喫煙対策、秋の陣」では新大臣にはかつてない厳しいかじ取りが求められる。

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