成長のカギ握る"AIのある日常"
近頃AI(人工知能)という言葉がメディアで頻繁に取り上げられるようになってきた。AIはテレビや冷蔵庫、エアコン、自動車、ロボットなど、今やさまざまなものに搭載されてきている。エアコンであれば、外出先からスマートフォン(スマホ)経由で自宅を適温に設定でき、帰宅後は人を感知してムダなく温度調節できる。ソニーは11月1日、2006年に生産を打ち切っていた家庭用の犬型ロボット「aibo」の新製品を2018年1月から発売すると発表。可愛がれば可愛がるほどAIの学習能力で性能が高まるという。
数あるAI搭載機器のなかでも、今もっとも注目されているのがAIスピーカーだろう。先行する米国ではすでに人気が高く、日本でもLINEやグーグルから相次いで新製品が発売され、市場が活気づいている。音声で話しかけて操作するAIスピーカーは、ユーザーの言葉をAIが理解し、お気に入りの曲をかけてくれたり、天気や株価を答えてくれたり、例えば「明日の天気は?」と聞くと、音声で「曇り時々雨です。」などと返ってくる。スマホの次を担い「一家に一台」の可能性を秘めていると業界内でも期待が高まっている。
総務省は2017年版の「情報通信白書」で、今後IoTやAIへの投資が拡大すれば、潜在成長率並みで仮定したベースシナリオよりも2030年時点の実質GDPを132兆円押し上げ、年平均2.4%の成長率を達成できるとの試算をまとめた。人口減少下であっても、IoTやAIの導入による企業の生産性向上で人手不足の影響は避けられると見込む。
AIの進化でこれまで不可能だったことが実現するという日常は確かに魅力的だ。とはいえ、日本での搭載機器の普及率や認知度はまだ低く、そもそも「何ができるか分からない」「何となく聞いたことはあるがよく知らない」という人が圧倒的に多いだろう。将来的にさらにAIが進化し、「この前のアレさー」と話しかけたら、「それ昨日も聞いたよね。」とか「ああアレね。」と返ってくる日がくるのだろうか。私も含め、機械に話しかけること自体に抵抗感を覚える人にとっては、怖い世の中になってきた。経済の成長とより良い社会の実現に向け、AIが背負う役割は想像以上に大きいのかも知れない。