予防接種と口コミ

インフルエンザが大流行している。
厚生労働省「インフルエンザの発生状況について」(1月26日発表)によると、全国のインフルエンザ患者数は1月15日から21日までの1週間で約283万人にのぼり、前週から約112万人増加したと推計されている。さらに、学級閉鎖や学年・学校閉鎖になった保育所や幼稚園、小中高校などは1週間で7,536施設に達していた。


インフルエンザが流行する季節になると、予防接種の効果について巷間を賑わす。通常、その年のインフルエンザワクチンは、「国立感染症研究所インフルエンザワクチン株のための検討会議」でインフルエンザ流行予測が行われ、ワクチン製造株を選定、厚生労働省において決定される。2017/18シーズンでは、A型株2種類、B型株2種類が選定されており、私たちは合計4種類のワクチン株を予防接種で受けている。


現在、日本で使われているワクチンは、安全性に優れ副反応が少ない一方、免疫原性はそれほど高くない。そのため、ワクチン接種によりインフルエンザの発症を防ぐことができる確率は60~80%程度といわれている。したがって、予防接種では発症そのものや症状の重症化を一定程度防ぐ効果はあるが、感染自体を完全に防止することはできないという実情を理解する必要があろう。


こうしたなかで、なぜ予防接種の効果についてさまざまな議論が巻き起こるのだろうか。正確な情報の周知が不足している可能性もあるが、予防接種の効果に関する口コミの影響も無視できないのではないだろうか。


予防接種とインフルエンザの罹患関係は、次の4つに分けられよう。
  A.予防接種を行い、インフルエンザにかかった
  B.予防接種を行い、インフルエンザにかからなかった
  C.予防接種を行わず、インフルエンザにかかった
  D.予防接種を行わず、インフルエンザにかからなかった


上記のうち、B.とC.について積極的に話をする人は比較的少ない。他方、A.とD.の関係性は自身の経験から話をする人も多く、口コミとして広がりやすい。いずれも、予防接種の無効性を主張するものだ。


しかし、予防接種は一定の確率の下で重症化を防ぐ役割を果たしている。また、子どもへの集団接種では、本人だけではなく、高齢者の死亡率も低下させるという研究も蓄積されており、社会全体の免疫力を高める「間接予防効果」(集団免疫)も指摘されている。


今冬では、インフルエンザにかかった人がいる職場も多いのではないだろうか。2009年9月に帝国データバンクが実施した新型インフルエンザに関する調査によると、従業員が罹患した場合、企業の6割弱で業績に影響があると考えていた。近年では従業員の健康を配慮する健康経営が重視されているなかで、企業にとっても正確な情報の収集や対応が一段と大切になっているといえよう。

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