「科学風のウソ」を見破る方法

政府は証拠に基づく政策立案(EBPM)を推進し、ビジネスにおいてはデータ分析の専門家となるデータサイエンティストの必要性が注目されるなど、データ分析に対する関心は高まるばかりである。一方で、一見すると科学的な手法を用いているように見えながらも、不適切な定量分析が行われることもしばしば見受けられ、科学を装ったウソが巷にあふれている。


科学を装ったウソをつくには、いくつかの方法がある[1]。

  • 統計データの出典・年度を意図的に取捨選択、混合する
  • 代表性の欠落や異常値を偏ったデータで補完、拡大推計する
  • 分析期間や対象における外的要因などを考えない、悪用する
  • 分析手法における前提条件や基礎理論を有耶無耶にする
  • 潜在的な偏りや誤差を軽視し、強引な解釈をする

こうした方法で行われる「科学風のウソ」を見破ることは、上記のそれぞれに対応した、基本的な確認事項と問題の検出手順を踏んでいくことが重要だ。


他方、巧妙に仕組まれた科学風のウソを個人が見破るには限界もある。そこでは、組織的・体系的にウソを見抜く能力を磨いていくことが重要である。例えば、データ分析における盲点や留意点についての研修を行うことなど、組織として対応するいくつかのポイントがある。


数字はそれだけでもっともらしく見える。しかし、統計は万能ではない。難しそうな"何とか分析"という名前の分析手法を使って出したものを敬して遠ざけるか、反対に何かわからないものすごいものが出てくるのではないかと高すぎる期待を抱いていると、足をすくわれる可能性も高まっていくだけである。


最後に古典的名著から、統計のウソを見破る5つのカギを紹介しよう[2]。

  • 誰がそう言っているのか?(統計の出所に注意)
  • どういう方法でわかったのか?(調査方法に注意)
  • 足りないデータはないか?(隠されている資料に注意)
  • 言っていることが違っていないか?(問題のすり替えに注意)
  • 意味があるか?(どこかおかしくないか?)

統計のプロにかかれば、一般の人をだますことは容易だ。しかし、基本を押さえれば、そのウソを見破ることも可能だ。「科学風のウソを見破る」ためには、まず「科学風のウソのつき方」を知ることが肝要といえよう。



[1] 戒能一成「政策評価で『科学風のウソをつく』方法」、独立行政法人経済産業研究所Special Report、2018年
[2] ダレル・ハフ著、高木秀玄訳『統計でウソをつく法』、講談社、1968年

このコンテンツの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します。著作権法の範囲内でご利用いただき、私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます。