「ムーミン」問題の捉え方

2018年1月、大学入試センター試験の地理Bで出題された問題が話題になった。試験問題では、ノルウェーとフィンランドを舞台にしたアニメーションと、両国の言語との正しい組み合わせを選択する問題だった。


選択肢のアニメとしては、「ムーミン」と「小さなバイキングビッケ」をあげており、出題直後から受験生による戸惑いの声に加え、原作ではムーミン谷の舞台がフィンランドとは断定できない、あるいは大学入試センターの試験問題としてふさわしくない、不適切どころかむしろ良問である、などといった指摘が相次いだ。


大学入試センターは、出題された画像の景色からフィンランドが類推できるとして、「キャラクターの知識は直接必要なく、地理Bの知識・思考力を問う設問として支障はなかった」という見解を示した。


さらに、通常国会において「大学入試センター試験の『ムーミン』に関する設問に関する質問主意書」が提出され、政府は「問題において引用される資料や回答の内容は、いずれもそれ自体が高等学校の教科用図書に掲載されていなければならないというものではない」とする答弁書を閣議決定するなど、当試験問題に対する議論は広がりをみせていた。


こうしたなか、2月20~22日にかけて、フィンランドのティモ・ソイニ外務大臣が来日した。在日フィンランド大使館によると、ソイニ外相の会見において日本の大学入試センター試験に出題され話題になった「ムーミンの舞台はどこか」などについて記者から質問があった。その質問に対して大臣は胸に手を当て、「ムーミンはフィンランドに存在します。私たちの心の中に。日本の方々の心の中にもあると嬉しい」と応じたという。


私もこの設問に挑戦してみたところ、確かにアニメを考慮に入れなくても問題は解ける。両国の地理や自然環境の特徴は提示された画像からも読み取れる。他方、キャラクターに意識が向くと、多くの情報に混乱する可能性もあろう。この場合は、数学のトポロジー分野で有名な「ケーニヒスベルクの橋の問題」などの考え方を援用し、余計な情報を排除して重要な情報だけを抽出するということができれば、解答に至るヒントが得られるかもしれない。


一般的に、受験生にとって、センター試験はそれまでの努力を一気にぶつける場であることは論を待たない。


しかし、今回、さまざまな議論を巻き起こしたセンター試験の「ムーミン」問題は、ソイニ外相の発言で政治的に落ち着いたともいえる。2019年には、日本とフィンランドの国交100周年を迎える。これを機に、フィンランドのことをいろいろと調べたり、関心を高めるきっかけにするなど、前向きに捉えてはいかがだろうか。

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