捨てる費用

物を捨てるにもお金がかかる。当たり前のこの事実に、今更ながら気づかされた。
この度引っ越しすることになり、自宅のくたびれたソファを処分しようと思い立った。粗大ゴミとして自宅の外まで持ち出すことができれば、1,000円で自治体に引き取ってもらうことができる。だがしかし、我が家のソファは2.5シーターで、なかなかの厚みとそして結構な重量のため、腰痛持ちの夫と二人でマンションから力づくで運び出す、という案は早々に消えた。


そこで次に考えたのが、ポストにチラシがよく入っている不用品の処分業者。ネットで調べて価格が良心的そうな業者へ電話をかけると、「そのサイズのソファ処分なら、1万3,000円だね」と、そっけなく回答された。お値段以上の価値ある品物を提供してくれるため足繁く通わせてもらっている某家具店にて、4万円ほどで買ったソファの処分が1万3,000円とは、個人的に納得がいかない。「電話をした時期が悪かった。きっと3月末の繁忙期で対応が難しく、断るために高めの値段を言ったのだ」と自分本位な解釈をして、別の処分業者へ問い合わせてみると、「1万5,000円」という回答。最初に電話をした業者が法外な値段を言ったのではなく、それが相場であった。


この話を同僚にしたところ、その人の場合は大きなソファを自分で解体し、何とかマンションから運び出したそうである。我が家はというと、近いうちに買おうと思っていたソファを前倒して購入することで、古いソファを5,000円で引き取ってもらうこととなり、無事に一件落着した。


モノを処分する費用や処分にともなう労力を痛感し、個人で動かすことが難しい家具は二度と購入しまいと心に誓った。不要な物を減らし、生活に調和をもたらそうとする思想の「断捨離」や、持ち物をできるだけ減らし必要最小限の物だけで暮らす「ミニマリスト」などが、一部で注目されている。個人的にそういう方の生活に興味があり、今回のことを通してぜひ見習いたいと思ったものの、実行することはなかなか難しいだろう。


幅広いリユース品の個人間売買が活発に行われるフリーマーケットアプリ「メルカリ」は、2017年12月に世界で1億ダウンロードを突破した。また、シェアリング・エコノミーの国内市場規模は2016年度の約503億円から2021年度には約1,070億円へ拡大すると予測されている(矢野経済研究所)。当たり前のことであるが、不用品を売却できれば処分する必要はなく、物を所有しなければ処分する費用も発生しない。新品を購入することやそもそも物自体を所有することに重きを置かない価値観が、今後ますます広がっていくことは止められず、我々はそうしたサービスを享受し、よりいっそう生活を豊かにさせていくのであろう。

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