景気はピークを過ぎたのか
景気は足踏み状態が続いている。TDB景気動向調査によると、2018年5月の景気DIは前月比0.4ポイント減の49.4と2カ月連続の悪化となった。
近年の景気動向を振り返ると、アベノミクスの始動とともに上向いた国内景気は、2014年4月の消費税率引き上げをきっかけに大きく悪化。しかし、2016年夏以降は、好調な海外経済を受けて半導体関連や機械類をはじめとした製造業を中心に再び拡大基調を続けてきた。
2018年1月には過去最高を記録した景気DIだったが、人手不足にともなう人件費の上昇や原油価格の高騰によるコスト負担の高まり、保護貿易主義に対する懸念の広がりなどを背景に足踏み状態が続いている、という状況である。
では、拡大を続けていた国内景気は、すでにピークを過ぎたのだろうか。
景気の捉え方にはさまざまな方法があるが、ここでは景気循環論に基づきながら考察してみよう。日本が採用している景気循環の考え方であるミッチェル=バーンズ方式では、景気は(景気の谷)→回復→拡大→(山)→後退→収縮→(谷)という4つの局面で周期性を持つことが特徴となっている。
そこで、まず在庫の動きから確認する。TDB景気動向調査の結果から、5月の在庫DIは51.4となった。ここ6カ月間は同程度で推移しており、在庫水準は緩やかに増加している様子がうかがえる。また生産・出荷量DIは50.6となり、2017年12月をピークに徐々に低下してきた。生産・出荷量は徐々に鈍化している。これらを在庫循環としてみると、景気拡大による在庫積み増しから意図せざる在庫増へと移り、景気の山を越えた可能性が示唆される。
次いで、景気DIを景気基準日付の基準(内閣府)と照らし合わせてみる。景気DIの3カ月後方移動平均の前月差をとると、直近3カ月間の累計はマイナス0.885であり、調査開始(2002年5月)以降の標準偏差は0.848である。また、5月の7カ月後方移動平均の前月差はプラスであった。これらから、現在の景気は足踏み状態ではあるものの、下方への局面変化には至っていない可能性を示す結果となった。
そのため、景気循環論の視点からみると、5月の景気動向は、景気拡大期を経て(山)に差し掛かっている可能性はあるものの、後退局面には入っていない状態。つまり、足踏み状態が続いている状態である、といえよう。
では今後の景気はどうだろうか。TDBによる景気予測DIでは、しばらくは概ね横ばい傾向で推移するとみられる。また、超先行指数として捉えられる一致・遅行比率をみると、ここにきてやや弱含みつつある。こうしたことから、今後の景気は拡大傾向が変調する可能性も出てきている。国内景気は輸出や設備投資がけん引するとみられるものの、保護貿易主義の高まりや地政学的リスクなど海外からの景気下押しリスクについて注視する必要がある。