財布のヒモが緩むには

我が家の財布のヒモは今、緩みきっている。住宅という一世一代の大きな買い物をしたことにともない金銭感覚がマヒし、今まで購入を躊躇していた家電製品を立て続けに買い替えた。


はじめは炊飯器だった。10年前に購入した我が家の炊飯器は、内釜の底部分のコーティングがすっかり剥げていた。そろそろ買い替えなくてはと思っていたが、問題なく炊けるうえ、せっかく買うのであれば今より性能が良く容量が大きい物が欲しいと思うとそれなりの金額がするため躊躇していた。購入した炊飯器は、高級志向が高まる現在の炊飯器市場のなかで高価な部類にはとても入らないが、子供たちが「お米が美味しくなった」と言うので、良い買い物をしたなと満足していた。これに味を占め、立て続けにパソコンや掃除機を購入。どれも故障による購入ではなく、普段感じていた不便を解消するための買い替えであった。加えて、住宅購入に付随するかたちで食器洗い乾燥機や浴室乾燥機、カーテン、表札など多くの物をまとめて購入した。


一方、世の中の財布のヒモは引き締まりつつある。総務省「家計調査」によると、二人以上の世帯の4月の実質消費支出(変動調整値)は前年同月比で1.3%減少し、3カ月続けて悪化した。同じ総務省の消費動向調査では5月の消費者マインドは「弱含んでいる」とし、「足踏みがみられる」から「弱含んでいる」へと下げた4月に続き、基調判断を据え置いている。天候不良などによる野菜価格の高騰やガソリン価格上昇に諸々の値上げも重なり、消費者の財布のヒモは固くなってきている。


では消費者の財布のヒモが緩まるには、どのような条件が必要であろうか。なにより給与が増えたとの実感が不可欠だが、給料の額面金額が上がっても手取り額が横ばいであれば、財布のヒモは緩まない。手取り額が"それなりに"増えた、という確かな実感がないと緩める気持ちにはなりにくい。さらに、子供の教育費や親の介護、自分の老後など先行きへの不安は尽きないことが、今を楽しむ消費より将来に備えた貯蓄を優先しがちな要因になっている。将来のことなど誰にも分からないので、「なんとかなる」と楽観視することが大切であると言われるものの、私のように漠然と将来への不安を抱える人が多いのではないかと思う。この漠然とした将来不安を解消できる明るい未来の実現を切に願いたい。

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