財布には 現金よりも ポイントが
「架空通貨」―昨今話題の仮想通貨ではない。これは15年前の2003年、今やドラマの原作でもおなじみとなった直木賞受賞作家・池井戸潤氏によって著された小説だ。これを手にしたのは、帝国ニュースの取材記者だった2006年のこと。「増えるニアマネー ~疑似貨幣の実態を探る」という短期連載をすることになり、先輩記者より「取材前にこれを読んでおけ」と渡されたのだ。地方の企業城下町が、当該企業の出す独自通貨で支配されているという設定で、ドキドキしながら読み進めたことを覚えている。
この架空通貨をキッカケに池井戸小説にのめり込んでしまったのだが、小説で描かれる金融機関の内情は、金融機関とお付き合いするうえで、かなり参考となった。ちなみに、池井戸小説では、帝国の冠が付いた信用調査会社が登場する場面があり、どのように書かれているのだろうかと、先述とは違ったドキドキ感を覚えたことが懐かしい。当時の取材を思い返し、十数年ぶりに「架空通貨」を手繰ってみようと思った次第。
さて、当時の取材では、地域通貨、電子マネー、リアルマネートレーディングをそれぞれ別の同僚が取り上げ、自身はショッピングポイントを担当した。"陸マイラー"としてポイントを利用していたこともあって興味があったのだが、この取材がきっかけでポイントにさらに興味を持ち、上場企業のポイントの引当金を調べることにつながった。2006年当時、発行したポイントの利用に備えて上場企業が引き当てた金額は総額で約3,000億円。今では、NTTドコモ(約1,300億円)、クレディセゾン(約1,000億円)、楽天(約700億円)と通信、金融、流通の各業界の3社をみても当時と同規模となっている。また、野村総合研究所のNRIジャーナル「ポイント会員向けのサービスはどこまで進化するのか」によると、2017年度のポイント発行額は約9,400億円にのぼり、2020年度には1兆円を超えると予測している。
ポイント経済は拡大する一方だが、その分、使用されずに失効するポイントも多額にのぼるようだ。財布の中身についても、現金よりもカードにたまったポイント額のほうが多いということは珍しくないだろう。スマホアプリで管理するというのが今どきであろうか。日本赤十字社などにポイントで寄付をするという方法もある。いずれにしても、せっかくたまったのだから上手に活用したいもの。長年の陸マイラー歴もあって、獲得したポイントを比較的活用しているほうかと思っていたが、ETCマイレージサービスが未登録であったのは悔やまれる。夏休み前までに登録しておこう。