実家暮らしへの冷たい視線
帰宅すると風呂は沸いており、晩ご飯が用意されている。朝起きると洗濯機が回っていて、自分は何もせずに衣類は畳まれタンスに入り、リビングやキッチンはいつも綺麗で清潔。
全てが自動化された未来の生活の話をしたいわけではない。堂々と言えることではないが、これは私が実家暮らしで受けている恩恵である。
この手の話をすると、「社会人にもなってまだ親に甘えているのか!」とおしかりを受けることもしばしば。自分でも甘えているとは思うが、毎月僅少ながら家賃(とは言えない金額かもしれないが)を納めている。家族で行く外食では全額出すこともある。両親の誕生日にはプレゼントを買い、肩が凝ったと言えば肩たたきもしている。
ただ、こうした"お返し"をしていることをどんなに説明しても、世間の"実家暮らし男子"を見る目は冷たい気がするのだ。
総務省の「平成27年国勢調査」によると、親と「同居している」者は約4275万人で、前回調査の平成22年(4559万人)と比べ減少。総人口に占める割合をみても、親と「同居している」者は総人口の33.8%にとどまり、平成12年の40.0%から一貫して低下している。
一方、親と「同居していない」者(約8389万人)の総人口に占める割合は66.2%と、平成12年(60.0%)から上昇傾向で推移しており、国内には単身世帯や夫婦のみの世帯が多い事が分かる。
つまり、親と「同居している」者、いわゆる実家暮らしの人は年々人数が減っているということ。少数派だからか、親のすねかじりのイメージがあるからかは分からないが、「あぁ...まだ実家暮らしなのね...」と少し見下されている気がするのは考えすぎだろうか。以前、居酒屋で隣に座っていた見ず知らずの中年男性から嘲笑気味に「一人暮らしくらいしていないと大人じゃないだろ」と指摘されたことがあるため、あながち考えすぎでもないのだろう。
見下されている、馬鹿にされていると思っているからではないが、年内に一人暮らしを始めようと目論んでいる。家事を全て任せていた楽な環境を飛び出し、正規の"家賃"を払い、病気や怪我にも一人で対処しなければいけなくなるわけだが、自由と自立を体験してみようと思う。一人暮らしの何がどう大人なのかを体感し、本当に大人の階段を登れるのかを試してみたい。
あの冷たい目をした世間の一人になってしまう時も近い気がする。