通勤電車とテレワークと

9月末の土日から10月1日(月)にかけて、猛烈な勢いで日本を縦断した「台風24号」。観測史上最大クラスともいわれた暴風雨は、さまざまな影響や被害をもたらした。今回の台風によって、休日のスケジュールをキャンセルした方や、交通機関の相次ぐ運休などで月曜日の出社が大幅に遅れた方も多かったことだろう。


私も台風の影響で交通機関の入場規制を受けた。その数日前にも最寄りの路線で突然事故が発生するなど、最近立て続けに駅の改札に入れない事態に遭遇した。その日は、やむなく待ち続けて運転見合わせから復旧した電車に乗るも、停車駅ごとに我先にと車内に多数の人が流れ込み、結局は身動きがとれず、へとへとになって会社に到着した。普段、通勤時はスマートフォンを見る、休息する、仕事の準備をするなどに活用しているが、車内で割と自由な時間とスペースがあったのは座っている人だけで、周囲の多くの人たちはほぼ同じような状況。正直なところ、こんなとき混雑を避けて「外で仕事でもできたら・・・」などと不自由さを感じたが、車内にいた人のうち、同じような思いを持った人はきっと何割かはいたのではないだろうか。


「一億総活躍」、「働き方改革」の実現に向け、「テレワーク」に注目が集まっている。


テレワークは、ITを利用し、在宅勤務やサテライトオフィスでの勤務、モバイル勤務(外出先でパソコンなどの通信機器を利用)といった時間や場所を有効に活用する働き方を指す。総務省の平成29年通信利用動向調査によると、国内企業におけるテレワークの導入率は2017年で13.9%(前年は13.3%)、近年はゆるやかな増加傾向にあるという。国も東京都や関係団体と連携し、2020年の東京五輪に向けて企業のテレワーク導入を推進しており、今後さらに注目が高まるだろう。


その一方で、普及にはまだまだ課題も多いようだ。同調査では、テレワークの利用希望者から「会社のルールが整備されていない」「テレワークの環境が社会的に整備されていない」など環境面のほか、テレワーク自体の「認知度向上」や「導入に向けた意識改善」も課題に挙がっている(総務省「情報通信白書」(平成30年版))。海外のテレワーク導入状況(企業導入率)をみると、米国(85.0%)、英国(38.2%)など、長時間労働のイメージが根強い日本に比べると、海外のほうがテレワークは進んでいるといえる。


実際に、テレワークを導入した企業のうちの8割強が労働生産性の向上に効果を感じているほか、働く側も、移動時間の削減や自由時間の増加を期待しており、導入によるメリットは大きいようだ。今後、さまざまな働き方が広がっていき、通勤電車が少しラクになるといいなと思う次第である。

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