未活用労働410万人の衝撃

企業における人手不足の深刻化が止まらない。企業の51.7%で正社員が不足していると考えており、9月として初めて5割を超え、同月の過去最高を更新した(帝国データバンク「TDB景気動向調査2018年9月」)。また、同調査で非正社員においても3社に1社が不足と回答していた。


他方で、追加就労希望就業者(就業時間が週35時間未満の就業者のうち、今よりも多くの時間を働きたい者)は、女性を中心に187万人いる(総務省「労働力調査」)。また、潜在労働力人口(非労働力人口のうち、潜在的に就業することが可能な者)は高齢者を中心として37万人、さらに失業者186万人を加えると、今後の労働力供給余地を測る未活用労働は410万人にのぼっている。


こうしたなか、先の通常国会において働き方改革関連法が成立し、同関連法は2019年4月から施行される予定である。働き方改革への取り組みは、人材の採用や定着、育成とともに、投資やイノベーションなど生産性向上にも期待され、今後ますます重要性を増していくとみられる。


TDBが実施した調査によると、企業の37.5%が働き方改革に取り組んでいるほか、今後取り組む予定の企業(25.6%)を合わせると、6割超の企業が働き方改革への取り組みに前向きな考えを持っていることが明らかとなった(帝国データバンク「働き方改革に対する企業の意識調査」2018年9月14日発表)。


15~64歳の生産年齢人口は、今後20年で現在より約1,380万人、30年で約2,170万人減少すると予測されている(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」、総務省「人口推計」2018年4月確定値)。


このような状況下において、人手不足の深刻化は一段と加速すると予想されるが、一方で、現時点において400万人を超える人材が未活用のまま埋もれていることも事実である。


優秀な人材の確保は、企業の成長に必須の条件であるとともに、とりわけ中小企業では人材の確保・定着が一層困難となっている。そのため、各社は効果的な採用活動に向けた改善を続けることが重要である。しかし同時に、政府には、労働者の最適な移動を可能とする労働市場の整備や未活用労働者を活用するきめ細かな政策の実施が求められよう。

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