キャッシュレス決済、普及進むか

キャッシュレス決済を推進する機運が高まっている。
経済産業省が2018年4月にまとめた「キャッシュレス・ビジョン」によると、キャッシュレス決済比率は、韓国が89.1%と9割近くであるのに対し、日本は18.4%と2割弱にとどまっている(「未来投資戦略2018」では2017年時点で21.0%)。中国60.0%、イギリス54.9%、アメリカ45.0%、フランス39.1%とあるなかで、日本は現時点でキャッシュレス後進国と言えるであろう。


また、手段別にみると、イギリス・フランス・インドなどはデビットカードが主流なのに対し、韓国や日本はクレジットカードが主流となっている。興味深いのはカード保有枚数で、日本人は1人当たり7.7枚を所持。普及率の高い国を軒並み上回り、シンガポールに次ぐ2番目の多さで、日本人は世界的に見ても使わないカードを多数保有していることになる。私を含めて、心当たりのある方も多いのではないだろうか。今後については、政府による成長戦略「未来投資戦略2017」で2027年までにキャッシュレス決済比率を4割程度へ、さらに前述の同ビジョンの中で世界最高水準の80%を将来的に目指すとしている。


安倍首相は、消費税率を2019年10月に予定通り8%から10%へ引き上げることを表明した。税率引き上げによる消費の落ち込みを回避すべく、政府が検討している経済対策の一つに、キャッシュレス決済にともなうポイント還元案が浮上している。また「未来投資戦略2018」では、マイナンバーカードとキャッシュレス化を結び付けた地域活性化策が検討されている。仮に実施されれば、キャッシュレス決済による利便性を感じた消費者の間で決済方法が定着化し、普及が大幅に進むことは十分に考えられる。導入する小売店側の初期投資負担やカード会社に支払う手数料の問題はあるものの、レジでの会計時間短縮や現金管理の負担削減などから、深刻な人手不足の一部緩和につながると期待される。


しかし一方で、キャッシュレス決済にともなうリスクも考えておかねばならない。平成30年北海道胆振東部地震では、大規模停電により決済トラブルが発生している。小売店舗の店頭でカードなどの決済端末が使えなくなったうえ、ATMも動かず、大きな混乱が生じた。増加が続く訪日外国人向けの利便性向上の面からも、キャッシュレス環境の整備が急がれるなか、キャッシュレス決済の普及による利点を社会全体で最大限享受できるよう、普及促進とともにリスク対策を同時に進めることが今後必要となってくるであろう。

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