地域にあるニッチな産業~金沢でつくられる回転寿司の心臓部~
近年の回転寿司チェーンの売上高上位3社は、「第1位スシロー(約1,564億円)」「第2位くら寿司(約1,228億円)」「第3位はま寿司(約1,186億円)」となっている(帝国データバンク「TDB REPORT 業界動向2019-I」)。
なんと言っても低価格で豊富なメニュー、各店様々な趣向を凝らしており、私も家族でよく利用している。家族連れには頼もしい味方である。
店によっては、新幹線のトレーが走る特急レーンがあったり、食べ終えた皿を回収口に投入するとおもちゃの抽選があったりと、食事として寿司を楽しむだけでなく、娯楽として楽しめる空間といえるだろう。
そんな回転寿司であるが、全国津々浦々どの店にも必ずあるものは何だろうか?
それは、『回転寿司コンベア』である。
あたり前であるが、これがなければ回転寿司は始まらない。この回転寿司コンベア製造業界ではトップ企業と知られており、国内シェア70%内外を誇る企業が石川県金沢市にあることをご存じだろうか。
約40年前に自分の席でお茶を入れることができる「自動給茶装置付寿司コンベア機(1974年4月)」を開発し、回転寿司を一躍全国に広め、敷居の高かった寿司店を身近なものにした企業である。その企業の名は「株式会社石野製作所」である。
ちなみに、このコンベア機が開発される前は、陶器の湯飲みにお茶をいれて、寿司と一緒に回していたそうである。
そして同企業は、回っていない寿司をタッチパネルで注文し、自席に注文の品をいち早く配膳する「特急レーン」が付随したコンベア機も開発している。この開発は、子どもが喜ぶエンターテインメントだけではなく、回転寿司業界にとどまらず外食産業に大きな革新を与えている。
数年前、渋谷に回らない回転寿司屋ができたことは記憶に新しいが、焼肉屋や串カツ屋といった寿司以外の業界にも特急レーンが採用されている。
人手不足やコスト削減が叫ばれる昨今では、注文と配膳が自動化されるということは時代のニーズに合致した業態なのかもしれない。さらに注文と配膳の自動化は、世の外食産業に拡大する可能性を秘めているだろう。
地域には、オンリーワンの技術やノウハウを持ち、柔軟な発想でこれまでになかったものを生み出す企業が存在している。そういった企業のことを知ることは私の凝り固まった思考を柔らかくしてくれる(着想や技術を学ぶなんてことは烏滸がましくて言えない)。
この文章を書きながら、回転寿司の次は、「ドローン寿司」と思い描いていたが、残念ながらそれは既に考案されているようだ...(ロンドンの寿司レストランで試験的に導入)。