天災は忘れる間もなくやってくる
平成最後の年となる2018年。この夏は記録的な豪雨や台風、大規模地震と自然災害が相次ぎ、甚大な被害そして多くの犠牲者を出した。日本が災害大国であることを改めて思い知らされ、防災・減災の重要性を身に染みて感じた夏でもあった。「天災は忘れたころにやってくる」という有名な警句があるが、地球温暖化の進行にともなって災害の発生リスクが高まる今日においては、天災は忘れる間もなく次々と襲ってくるのである。
今後30年以内には、西日本全域におよぶ超広域災害になりうる南海トラフ地震と、首都中枢機能への影響が懸念される首都直下地震の発生確率が70%と想定されている。特に南海トラフ地震は、想定死者数が約33万2,000人、想定建築物全壊棟数が約250万棟となっている(内閣府「南海トラフ地震防災対策推進基本計画の概要」)。東日本大震災の死者・行方不明者数が2万2,233人、住家全壊棟数が12万1,768棟(2018年9月1日現在、余震による被害を含む)だったことからも、日本では過去に類を見ない被害が想定されている。
こうした被害を完全に防ぐことは不可能に近いが、被害を最小限にするために不可欠となるのが「自助」「共助」「公助」の三助である。この三助という考え方は、江戸時代の米沢藩主であった上杉鷹山が自助・互助・扶助の「三助の精神」を唱えたことが始まりであるとされている。鷹山は財政が逼迫していた当時の米沢藩を「三助の精神」に基づいて、奇跡的に立て直したのだ。今時、災害が起きる度に「自助」「共助」「公助」が提起され、災害対策のキーワードとなっている。江戸時代の鷹山の考え方は時を超え、現代の私たちが大切にすべきことを教えてくれているのである。
当たり前だと思われるかもしれないが、そもそも自分の命を守れなければ他の誰かの命や地域の安全を守ることはできない。災害対策における基本は、自分の命は自分で守るという「自助」の考え方なのだ。災害が発生してから何かをするのでは遅い。国民全員が「災害はひとごと」とは思わず、いつ、どこで災害が起きてもおかしくないということを認識し、日常的な心構えや対策・備えを講じてほしい。