歩くと危険、エスカレーター!歩かなくても危険?なエスカレーター
2018年の暮れ、日本経済新聞にて「エスカレーターを『歩かないで』鉄道各社、習慣に反旗」という記事が掲載されていた。
朝の通勤ラッシュ、エスカレーター上を歩行する人を見ない日はない。首都圏では、右側は急ぐ人が歩行するために空けておく「暗黙のルール」が無意識に染みついている。
エスカレーター上を歩行することが危険だと分かっていても、朝の通勤時や急いでいるときには歩いてしまうのが人間の性なのか、日本エレベーター協会のアンケート[1]では「歩行をやめたほうがいいと思う」が70.6%である一方で「歩行してしまうことがある」が83.8%であった。
私も子どもと手をつないでエスカレーターに乗りたいところだが、右側を空けることがマナーという認識もあり、子どもが前のステップに私がその後ろのステップに乗り子どもを支える格好となる。
さて、記事中に同協会の担当者の声で「エスカレーターを歩く人にとっては到達時間の短縮になるが、エスカレーターに同時に乗れる人数は減る。特に朝のラッシュ時の駅で電車から降りた人を一気にさばく上では、両側に立つ方が効率は高まる」とあった。
朝の混雑する鉄道駅を利用する身としては、(エスカレーター上の事故などの危険性は度外視になるが)感覚的に片側でもエスカレーターを歩行したほうが移動効率は高まるのではないかと思う。
例えば、混雑の激しい駅でホーム上が狭隘な部分(昇降施設の脇など)においては、なるべく早く人をホーム上から退避させる必要がある。ラッシュ時の降車客の多い駅においては、列車の運行間隔中にすべての旅客がホーム上からいなくなることは難しく、エスカレーターに両側立ち止まって利用すると乗り口に殺到する旅客の滞留が生じて危険性が高まると思われる。場合よっては列車との接触やホーム上からの転落などが発生してしまうのではと危惧している。
もう一つ、記事中に興味を引く箇所があり、「片側空けが世界で初めて行われたのは1940年代の英・ロンドンの地下鉄駅との説がある。その後、欧米各国をはじめアジアに広がった。現在、片側空けは世界的に共通の習慣になっている」とあった。
片側を空けておく習慣が海外から輸入されたものと考えると、東京五輪を前に訪日外国人が増加している昨今、かえって日本だけがエスカレーターの運用方法を変更すると思わぬ事故が発生してしまうのではと邪推してしまう。
とは言え、エスカレーター上で危険な目にあった人や子連れの人、事情により片側しか手すりにつかめない人など皆が気持ちよく利用するためには、エスカレーターを「歩行しない」ということは非常に大切である。また、世界に向けた新たなエスカレーター文化の発信として啓蒙する意味もあるだろう。
「急がば回れ」という諺のとおり、急いでいるときほど確実な回り道を選ぶ方が結果として早くなることを念頭において皆が行動すれば、エスカレーターの利用方法が変わるのではないだろうか。
[1] 日本エレベーター協会「エレベーターの日『安全利用キャンペーン』アンケート集計結果について(2017年度)」