社内の対話増加でイノベーション
取引先との関係を密にし、そのなかでの情報交換が大切であるということはごく一般的な考え方だ。その一方で、近年は社内におけるコミュニケーションの重要性も高まってきた。社員が働くうえで、主に社内のなかでどの部署がどのような業務を扱っているかを知り、さらにそれらに関する理解を深めることで他部署との連携が強化され、新たなモノやサービスの創造、つまりイノベーションにつながる、といった考え方に基づいている。
先日、私は上記に関するセミナーに参加し、各企業の社内コミュニケーション向上に向けた取り組みやその効果を拝聴してきた。まだ様々な職場を経験していない私にとっては非常に新鮮な内容の数々であり、自社に取り入れるならばどのような項目だろうかと想像を巡らせる機会となった。そのなかでいくつか事例をご紹介したい。
まず、とある百貨店の取り組みが紹介された。百貨店の従業員だけでなく様々な店舗が入っているため複数の企業の社員が比較的近い距離間で働いている。しかし、やはり他社の社員なので見えない壁ができてしまい、どうしても関わりが持てなくなってしまうという声が多かったそうだ。そこで、全社員が参加できる形でイベントを開催し、その開催日を休館にして同じ建物で働いている全ての社員が参加できるようにした。営業日が少なくなることは収益に影響するため最初は否定的な意見が多かったが、開催後の評判は非常に良好で、「顔だけは知っていたという人との対話が生まれ、明るい気分で仕事ができるようになった」「今まで他社の方が多いために居場所が狭く感じていたが、情報交換が盛んになる空間に変わった」といった声が多く寄せられる結果となった。建物内を"社内"と考え全体の交流を図り、情報交換だけでなく働きやすさも同時に生み出した好例であると感じた。
もう一つ、オフィス空間の活用についての事例を紹介したい。従来は化粧室や会議室、リフレッシュルームをフロアの各所に配置していたが、これらを極力近いエリアに再配置した結果、人が集まる場所が集約されたことにより対話の機会が増えた。さらに会議室のレイアウトを変更したところ、会議で出てくるアイデアの件数が約30%増加したそうだ。具体的な計算方法までは明かされなかったが、オフィス環境を少し変えるだけで大きな差があるのだなと感じた次第である。
当セミナーを通じて各登壇者が話していた共通点は、対話の質を高めることではなく機会を増やすことであると感じた。何気ない対話からイノベーションが起こる可能性も十分に考えられることに加え、働きやすい職場も作ることができる。様々なメリットをもたらす対話機会の拡大を、是非意識してみてはどうだろうか。