「バイトテロ」対策に、「教育の徹底」は可能?

2018年12月に話題になり今年2月に飲食店におけるアルバイト社員の不適切行為が一気に明るみに出て、各社は相次いで謝罪する事態になった。業務内の悪ふざけがSNS上で拡散され、いわゆる「バイトテロ」という言葉が定着するまでの時間は本当に早かったように思う。社会問題も流行語もSNSが左右する時代だなとつくづく感じた。


さて、謝罪に追われた各社のコメントに目を通すと、「従業員教育の徹底」を主な再発防止策として掲げている。当問題について触れているテレビ番組を見ると、「アルバイト社員にも責任感を持たせることが必要」などという言及を頻繁に耳にする。たしかに私もこうした対策は必要だと思うのだが、達成への道のりは困難と予想している。


明るみに出たもののみを見ると、「バイトテロ」で問題になった社員は学生がほとんどである。そうであるならば、教育の主な対象が学生であることを念頭に対策を練るべきであろう。そこで「学生アルバイト」の特徴を、大きく2点提起したい。


一つ目は、学生は自己啓発や旅行、ショッピングなどにかかる費用を稼ぐためにアルバイトをしているという特徴だ。生活費を稼ぐという目的を持った主婦層などとは目的が異なる場合が多い。その就業動機に対して教育を徹底しようとすると、学生側から避けられることも考えられる。ただでさえ人手不足が深刻ななかで学生が働こうと思える労働環境ではなくなるため、企業側は徹底した指導をしにくいのではないだろうか。


二つ目に、学生は長期の定着が事実上不可能という特徴である。例えば大学入学時から卒業まで同じ職場で働いたとしても、通常4年が限界だ。しかしこの例もあくまで最長であり、なかには数カ月で辞める場合も少なくない。つまり学生アルバイトは入れ替わりが常であるという認識が妥当だろう。この状況下で、定期的な社内研修などの教育を行うことは非常に難しい。さらに今回のような飲食店ではシフトを回すことで精一杯であることも大いに考えられる。そうなると教育の場を設ける余裕は残されていないだろう。


以上の2点から、アルバイトに対する「教育の徹底」が本当に可能か疑問を抱いている。例えばこのような事件を未然に防ぐには、採用に力を入れるなどの策が必要である。しかし現時点では人手不足のため、人材を選りすぐる余裕はない。そこでより多くの応募を得るためには賃金や職場環境の改善などが必要になり...という具合に様々な壁が立ちはだかる。前途多難だが、今こそアルバイト社員への待遇や考え方を見直す絶好の機会だろう。

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