団地とタワーマンションの類似点!?
新元号「令和」が公表され「平成」も残すところあとわずかであるが、三大都市圏をはじめ全国各地でさまざまな開発事業が進んでおり新しい時代の幕開けにも期待が募る。
特に、東京の豊洲や勝どき、晴海などにおいてはオフィスビルやタワーマンションなどが建設されている。マンション群ではファミリー層の入居が目立ち、少子化が言われるなかでも、当該地区では小学校の新設など子どもたちで街のにぎわいが醸成されている。
さて、今上天皇陛下が皇太子殿下であった当時、国内事情を視察する目的で東京都にある「ひばりが丘団地」を訪れていた。
今では当たり前であるが、水洗トイレや浴室が住居内にあるなど、団地は「憧れ」の存在であった。これまで、食事の時には和室にちゃぶ台を置き、寝るときはそれを片付けて布団を敷くという生活様式が一般的であったが、団地は「食寝分離」の新しいスタイルを提供していた。
また、多くが都心からやや郊外に立地しているため、緑もあり子どもを育てる環境にも最適であった。同世代の家族が入居し、共有の広場では子どもの声が響き、盆踊りなどさまざまな行事でにぎわいをみせていた。
時代は流れ、これらの団地にはさまざまな課題が生じている。建物の老朽化や居住者の高齢化などにより、かつての魅力ある暮らしは漸減している。昭和30~50年代に建築されているため、老朽化だけでなくエレベータなどの設備もなくバリアフリーにはほど遠い。また、同世代のファミリー層が入居していたため、周囲が同じように年齢を重ね、子ども世代も一斉に団地を巣立ってしまっている。
現在では団地再生に関する事業が行われているが、以前の輝きを取り戻せている団地は多くない。
今、進められている開発事業でも、かつての団地入居者と同じように、同世代の入居がみられているのではないだろうか。現時点では輝かしい街のにぎわいがあり、子どもたちの声が聞こえるが、30年後はどうだろうか。
望まれているのは、高齢者・ファミリー・単身者・学生など様々な世代や家族構成が居住する多世代ミックス型の居住環境であろう。世代を超えた交流や誰もが住みやすい環境づくり、居住の住み替えや入れ替えによる新陳代謝などが将来を見据えたまちづくりのあるべき姿かもしれない。
時代は繰り返すのか、過去の反省を活かすのか、長い時間をかけないと結果がみえない答えが楽しみである。