生活時間から景気動向を掴む
経済は人びとが日々営む活動の結果である。そのため、景気動向は、経済指標や金融政策などだけでなく、日常生活の行動を追うことからも捉えることができる。
そこで日本在住者の生活時間を確認してみると、1日のうち最も多くの時間を費やしているのは「睡眠」で7時間40分である(総務省「平成28年社会生活基本調査」10歳以上の男女個人、週全体平均)。以下、「仕事」が3時間33分、「テレビ・ラジオ・新聞・雑誌」が2時間15分、「食事」が1時間40分、「休養・くつろぎ」が1時間37分などと続いている。
「睡眠」「食事」など生理的に必要な活動時間や、「仕事」など社会生活を営む上で義務的な性格の強い活動時間だけでなく、各人が自由に使える時間における活動である「テレビ・ラジオ・新聞・雑誌」や「休養・くつろぎ」に対してもそれぞれ1日のうち1割弱の時間を割いている様子がうかがえる。
また、主な行動の種類について過去20年間の推移をみると、「身の回りの用事」や「休養・くつろぎ」、「趣味・娯楽」などの時間は増加傾向にある一方、「睡眠」や「テレビ・ラジオ・新聞・雑誌」、「交際・付き合い」などの時間は減少傾向となってきた。
こうした日常の生活行動のなかで、景気変動との相関がみられるのが、実はテレビ視聴と言われている。特に、国民的アニメ「サザエさん」(フジテレビ)や現在でもしばしば視聴率20%を超える長寿番組「笑点」(日本テレビ)などが、景気との関連性を指摘されてきた。
しかし、近年では、少し様相が異なってきているようだ。2015年以降のデータを用いて、帝国データバンクの景気DIとテレビ視聴率(ビデオリサーチ調べ、リアルタイム視聴率、関東地区)の相関関係を分析すると、日曜日の朝に放送されているアニメ「ONE PIECE(ワンピース)」(フジテレビ)との相関が▲0.83と最も高い結果となった。
なぜ、景気動向とテレビ視聴率の関係性が夕方から朝に変化してきたのだろうか。
一つの理由として、日曜日の朝(7時~9時30分)における在宅率が過去20年間で少しずつ低下していることが考えられる(NHK放送文化研究所「2015年国民生活時間調査」)。背景には、経済のサービス化が進展したことなどにともない、日曜日に仕事をしている人が少しずつ増えているなかで、日曜日の朝がより景気に対して敏感に反応する傾向が表れてきた可能性もある。
若者を中心に幅広い年齢層でインターネットを利用する時間が増加しているなかで、人びとのテレビ視聴時間は減少傾向が続いている。しかし、さまざまな社会背景の変化をともないながらも、景気動向と視聴率の関係性は引き続き注目されていくのではないだろうか。