点字ブロックにみるトレードオフの関係

大型連休中の東京駅、駅の構内外は大混雑しており、歩くのも一苦労である。
ましてやキャリーバックやベビーカーを持っている人にとっては目的のホームに辿り着く頃には、旅の出発前にも関わらずかなり疲弊してしまうことだろう。なるべく、我が家も荷物はコンパクトを心掛けているが、中程度のキャリーバック1つは必ず必要となってしまう。


私もこの連休中に混雑する東京駅で人混みを避けながら、子どもを抱えてキャリーバックを押していると、キャリーバックが何度か小さな段差に躓いて転倒しそうになった。その小さな段差とは、視覚障害者誘導用ブロック(以下、「点字ブロック」)である。


点字ブロックとは、視覚障害者を安全に誘導するため地面などに敷設されている表面に突起をつけたブロックのことである。


視覚障害者にとって必要不可欠なものと認識しているが、混雑する場所では却って危険が増し、歩行上のバリア(路面の凹凸による段差や雨天時に滑りやすくなることなど)になるのではと考えてしまう。躓いて自ら転倒することだけでなく、不意に立ち止まることになり後続の人とぶつかることにも繋がってしまうだろう。また、高齢者やベビーカー使用者、車いす使用者などでは、今挙げたこと以外にも不自由に感じることはあると思われる。


ある論文[1]においては、車いす使用者のうち点字ブロックを不便に感じたことがないと答えた者はわずか5%に過ぎず、多くが点字ブロックをバリアと感じていた。また、ベビーカー使用者のうち8割以上が点字ブロックにベビーカーの車輪がひっかかって困ると回答していた。


点字ブロックは必要な設備であると認識している一方で、障害の種別によっては、点字ブロックをバリアと感じる人がいることも事実である。また、ベビーカー使用者や健常者であっても混雑する場所においては歩行上のバリアと感じることもある。


さまざま人たちが共生する現代社会において、「あちらを立てればこちらが立たず」といった状態はたびたび生じるであろう。


どこかで折り合いはつけていかなければならないが、どのようにその解を見つけていくのかが仕事を進めていく上でも大切となってくる。そういった場面においては、まわりを見つつ、多様な意見を傾聴し、解を見つけていくことが重要となろう。



[1] 水野智美、徳田克己「点字ブロックが車いす使用者、高齢者、幼児の移動にどの程度のバリアになっているのか」厚生の指標、第57巻第1号、2010年1月

このコンテンツの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します。著作権法の範囲内でご利用いただき、私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます。