ドライバー不足に直撃する働き方改革の波
「人手不足」という言葉が毎日のようにメディアで扱われているが、なかでもドライバー不足は深刻だ。現に、「運輸・倉庫」業界の7割以上は主にドライバーに対する人手不足を感じている実態がある[1]。そうした環境のなか、働き方改革の波はドライバーにもやってくる。
労働基準法の改正によって2024年度からトラック運送業の時間外労働に960時間の上限規制が適用される。しかし、長時間労働が常態化したなかで上限規制の導入を迎えてしまうと、対応できない事業者が出てくることも考えられ、輸送力が落ちてしまう可能性もある。そこで、早期にドライバーの長時間労働を改善していくことを目的に、貨物自動車運送事業法が2018年末に改正された[2]。
まず、悪質な事業者の排除のために長時間労働規制の適正化が図られる。従来は法令に違反した事業者に対する許可取消をしてから再参入できるようになるまで2年間の欠格期間を要していたが、今後は5年間に延長される。処分を逃れるために自主廃業した事業者にも同様に適用されるので、抑止力として効果が期待できるだろう。だが、前述したように現状のまま規制強化をしてしまうと事業者が減少する可能性もあるため、働き方改革法が施行されるまでの時限措置として荷主への配慮義務が設けられた。トラック事業者の取り組みだけではなく、荷主にも協力してもらうことで両側面から働き方改革を進めようという狙いだ。
こうした法改正によって、労働環境の良いトラック事業者を増加させることで輸送力を維持・強化し、また長時間労働が是正されることで業界の魅力も向上し、新たなドライバーの確保も期待できる。
だが、今後も運送需要が高まることを考えると、前途多難なように感じてしまう。例えばEC市場は、経済産業省によると直近の2018年では市場規模が前年比5.8%増加とされているなど年々拡大している。つまり、ドライバーの長時間労働の是正を、荷物が増加している時代に逆行して行わなければならない。ドライバーがより魅力的な職業となるためには避けては通れない問題だが、まずは2024年度まで、前述のような取り組み以外にも数多く手を打たねばならないだろう。
[1] 帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2019年1月)」
[2] 施行日は「公布の日から起算して一年六カ月を超えない範囲内において政令で定める日」と定められている(施行期日第1条)。