一体どうなる喫煙環境

近頃、喫煙に関する企業の動きが活発化している。受動喫煙の防止に関する旨が盛り込まれた改正健康増進法が2020年4月から全面施行されることや、同時期に東京都では受動喫煙防止条例も施行されるということが大きく影響しているだろう。


例えば、味の素は2019年4月より本社において就業時間内禁煙を始め、2020年7月までに全事業所での就業時間内および屋内全面禁煙を実現、さらに2022年度には国内グループで就業時間内の禁煙を発表した。また、サントリーホールディングスも国内グループ15社を含めて、2021年4月より就業時間中の禁煙を完全実施するとしている。このように、大手企業が率先して禁煙に向けて取り組んでいる。


上記の例は全面禁煙ということで、かなり大々的に行うものだと感じていたが、調べてみると徐々に納得できるようになった。最初に目についたのは、東京都福祉保健局が2017年11月に発表した「受動喫煙に関する都民の意識調査」だ。そこで「あなたはこれまで受動喫煙にあったとき、どのように感じましたか」という質問に対して、82.5%が「迷惑に思った」と回答している。これだけ高い割合が迷惑と感じている以上は、徹底した措置を講じることが求められているのかもしれない。


また、飲食業界からは禁煙による業績への悪影響を懸念する声が多く聞かれてきた。しかしながら、最近では飲食店における禁煙の成功事例も増えている。居酒屋大手の「串カツ田中」は2018年6月から、居酒屋チェーンとしては初となるほとんど全ての店舗における全席禁煙化(一部フロア分煙化)を実施した。その結果、最大の目的であるファミリー層の取り込みに成功し、売上増を果たした。イタリアンファミリーレストランの「サイゼリヤ」も利用客からの要望を受け、2019年6月から全面禁煙をスタートさせた。こちらも今後の動向に注目が集まるところだ。


とはいえ、やはりいきなり全面禁煙というのは困難をともなう。そこで挙げられる方法が「分煙」だ。しかし、事業規模がある程度大きければ容易に実施できる一方で、小規模の飲食店では分煙に必要なコスト負担が重くなることや、スペース上の問題で実現できない可能性も考えられる。受動喫煙防止策を進めながら喫煙者にとっても過ごしやすい環境を整備するには、これまでにはないアイデアや取り組みが必要である。

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