マインドセットにみる10秒の壁と10%の壁
2019年7月20日、陸上の小池祐貴選手が日本人3人目となる男子100メートル走で9秒台を記録した。この約1カ月前にサニブラウン・アブデルハキーム選手が9秒97の日本新記録を樹立している。
日本人にとっての9秒台は、1998年に伊東浩司氏が10秒00を記録して以来、約20年にわたり破ることができなかった大きな壁であった。
しかし約2年前、桐生祥秀選手が日本人初の9秒台を記録。ひとたび、10秒の壁を超えると、多くの日本人選手たちのマインドセット(経験、教育、先入観などから形成される思考様式、心理状態)は、書き換えられたことだろう。
20年間破ることができなかった壁の向こう側に目標設定がされ、この2年間に3人の9秒台スプリンターが誕生した。
さて、2019年10月に消費税率の引き上げが予定されている。現行の消費税率8%から10%になることで、消費者や企業にとっても様々な影響が出てくると予想される。
帝国データバンクの調査[1]でも、約半数の企業で自社の企業活動に「マイナスの影響がある」と見込んでいた。個人消費においても、購買意欲の低下や買い控えなどが生じるであろう。
特に、我々消費者にとっては、消費税率が1桁から2桁に変わることへの心理的影響は消費行動に表れ、値上がりを実感すると節約志向が持続してしまう。つまり、消費マインドの悪化により長期間、景気は低迷するかもしれない。
ただ、10秒の壁と同じように、マインドセットが変わると消費税率引き上げの影響も大きく変わってくる可能性もあり得る。消費税率引き上げによって、医療や介護、子育て支援などの社会保障の充実が期待でき、我々も恩恵を受けることになる。
少しだけ見方を変えると我々の生活必需品やぜいたく品、娯楽費などの購入が巡り巡って、自分たちの生活に別の形で潤いをもたらすと考えると、そんなに悪いものではない。
買い控えて、巡ってくるはずの恩恵を逃すのも惜しいところである。ものの見方1つで良くも悪くもなるのであれば少しだけマインドセットを書き換えてみることも良いのかもしれない。
[1] 帝国データバンク「消費税率引き上げに対する企業の意識調査(2019年)」2019年7月11日