「サブスク」で参入相次ぐ
ある日のこと、新聞を読んでいて1つの記事が目にとまった。ユニ・チャームが、ベビー用紙おむつの定額制サービスを、2019年7月から本格的にスタートしたというもの。サービスの内容は、同社が手がける「ムーニー」ブランドのオムツを使い放題とする保育園向けの事業で、保育園へ週5日登園するケースであれば0歳児は月額3,000円、1歳児2,800円、2歳児2,500円となる。保育園側がこのサービスを導入すれば、保護者は紙おむつとおしりふき(ウェットティッシュ)の園への持参が不要になるというのだ。
過去に我が子が保育園へ通っていた時のことを思い返すと、親が保育園へ持参する荷物はかなり多く大変であったが、その荷物の中には「記名したおむつ」も含まれた。おむつ自体がかさばるうえに、園で他の子の物と区別できるようおむつ1つずつに名前を書かねばならず、毎日何枚も使う消耗品であることから記名の作業自体も負担であった記憶がある。こうした状況を踏まえれば、前述の定額制サービスに対するニーズは、子どもを保育園に通わせる親たちの間に確かに存在すると思われ、私自身もぜひ利用してみたかった。また、園児の人数分あったおむつの種類が集約されるため、保育士さんの負担も軽減されるであろう。
サブスクリプション、通称「サブスク」。代金を払って商品またはサービスを一定期間利用するビジネスモデルが今、増えている。例えば、動画や音楽などを定額料金で好きなだけ楽しめるサービスの利用が特に進んでいる。月額6,800円支払うと月に1回のペースで3着分の服が届く「エアークローゼット」では会員数が25万人を突破したほか、月額3,000円払えばカフェでコーヒーが飲み放題となるサービスなども話題を呼んでいる。
そうしたなかで商機を逃すまいと、大手企業の参入も相次ぐ。トヨタ自動車が手がける愛車サブスクリプションサービス「KINTO」は、2019年7月から全国展開がスタート。スポーツ用品大手のナイキは、8月に米国で子ども向けスニーカーの定額購入サービス「ナイキ・アドベンチャー・クラブ」の立ち上げを発表するなど、世界的に活発化している。
しかし一方で、会員数が伸び悩むケースや、早々に撤退するケースも出ている。参入が相次ぐことで競合が激化しているのだ。参入する企業は、消費者のニーズに合致した、またはニーズを掘り起こすような魅力的なコンテンツを投入する必要がり、また多くの利用者を獲得できたとしても、利用者を飽きさせない努力をその後も続けていかないと、生き残ってはいけない。1人の消費者として、おむつの定額制など、利用できるサービスの選択肢が増えることは大歓迎である。日々移り変わりゆく消費トレンドやニーズに合わせた柔軟なサービスが、今後も生まれていくことを期待している。