介護業界における人手不足に対する課題

先日、介護業界に詳しい方と情報交換する機会があった。様々な課題について話し合うことができたが、やはり人手不足の深刻化に最も頭を悩ませているのだろうなと感じる部分が多かった。


人手不足に関して、最も気にかけていたことは各業界で進む省力化や効率化といった動きが介護業界では鈍いことだった。その主なポイントは二点ある。一つ目は、主導する存在が必要であるということだ。例えば、物流業界ではトラックドライバーの負担軽減を目的に、農林水産省が賞味期限の年月表示化を進めている。従来は賞味期限が日付まで記載されていたために出庫作業が複雑になり、出庫の日程も厳密だった。これを年月表示に変更することで、納品期限の緩和に繋がる。こうした業務プロセスの見直しを、国が主導して行っているのである。介護業界ではこのような取り組みがまだ少ないという。


二つ目に、業界全体で束になって省力化・効率化に取り組むべきだということを挙げていた。上記と同じく物流業界を例にとると、日本加工食品卸協会はドライバーの待ち時間短縮を目的に、物流センターへの入庫時間を予約できる「トラック入荷受付・予約システム[1]」を発表した。すると、三菱食品や伊藤忠食品はすぐに同システムを導入し、物流効率の向上を図っている。このように、業界内の主要な企業が積極的に改善を図り、同業他社も同じように取り組むことによって、業界全体の機運を高めることができる。


ただ、介護業界では前述のような「中心選手」こそ不在だが、各社の取り組みは複数みられる。働くうえで難易度が高い、脈拍や体温などのバイタルデータの入力を自動で行う機器や、業務報告書を記入する負担を軽減するために音声入力支援システムを開発するなど、省力化に向けた取り組みは進んでいる。しかし、こうしたものを導入するにはコストがかかり、その点を懸念して導入に踏み切ることができない企業が多いそうだ。


情報交換を終え玄関までお見送りする際に先方が言われていた、「人手不足が喫緊の課題であるなか、業務の省力化や効率化はゴールではなくて、それによって介護業界のイメージが改善され、魅力ある業界となって人材が集まるようにならなければ意味がない」という言葉が強く刺さった。まさにその通りで、画期的なシステムが開発されても、導入するハードルが高ければ業務の改善及びその先には繋がらない。そうした点に関する支援も、今後進めていかなくてはならないだろう。



[1] 日本加工食品卸協会2019年2月19日(http://nsk.c.ooco.jp/yoyakusys/chirashi.pdf)

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